昨日の日経に東大の松井彰彦氏が日本農業について稿を寄せていました。その内容には以前から関心があって、知りたいと思っていました。
日本の食料自給率が今や39%であることは度々耳にしますが、純輸出国の米国やフランスは別として、ドイツ84%・英国70%(ともに2003年)に関して言えば、1961年時点で日本の78%に対し、それぞれ67%・42%に過ぎなかったと指摘しています。どれだけ日本が安全保障上の観点に欠けていたのか、と言うわけです。
また安保観点以外にも、農業が他の経済主体に与える経済効果の重要性を示唆しています。
例えばコメ市場に限定して考えても、自由化による国民全体の直接的な便益が一兆円と言われていますが、コメ生産地での水不足による環境負荷(を示す指標)が二十倍を超え、食糧輸送による環境負荷(を示す指標)が十倍になるとすれば、一兆円(GDPの0.2%)を、日本の原風景と言える稲田の保全に対する人々の少しずつの負担と捉えれば、決して法外とは言えないと主張しています。
そのような外部性や安全保障を定量的に評価して、農業保全への対価を我々が支払うことに異存はないとした上で、この対価を、耕作を放棄し転用益を狙う地権者や、流通独占によって中間マージンを稼ぐ農協などに支払うとなると話は別である、と言っています。
明治学院大学教授の神門善久氏は1990年代に農地転用による収入が農作物生産額を上回った点などを指摘し、「恣意的な農地規制の運用を正し、錬金術まがいの転用期待を減殺すること」によって、自動的に農業の担い手も現れ、日本の農業は活性化するのではないか、と言っているそうです。
また、日本農業研究所研究員の佐伯尚美氏は、農家への補助金を担い手に直接支払うよう求めているそうです。農協職員の人件費は一兆数千億、販売農家が農業で稼ぐ所得の半分近くに相当するそうです。
農家への補助金が結局、農協職員の給与に回るのでは、何のための補助金であるのかわからないし、農協による農家の締め付けについても併せて独禁法違反で取り締まるべき(創意工夫をする農家や農産物加工業者が独自の流通経路や資金調達を通じ新しい試みに挑戦できる場が必要)としています。
最後に、我々国民自身が当事者意識を持って判断・行動することの重要性を訴えています。
【後日記】『コメ、消費低迷も政策で上昇 国際価格は波及せず』
日経5/2の連載記事『価格の軌跡』です。本日は㊥巻です。以下に要約。
国内のコメ価格は国外とは別の理由で上昇しています。日本のコメ消費は低迷しており、価格も長期下落傾向にありましたが、昨年政府が農家対策として備蓄積み増しを決定してからは一転しました。人為的な需給調整の結果、新米が出回るまで不足感が出たわけです。
小麦価格高騰でコメ業界関係者はコメ消費の追い風になると期待していますが、消費低迷でコメ余りが解消されるのは難しそうです。
数少ない例外としては、1993年、長雨と冷夏が響き、戦後最悪の凶作となり、自主流通米価格形成機構(現コメ価格センター)の入札は深刻なコメ不足に停止を余儀なくされ、政府はコメの緊急輸入を決定しました。94年が豊作になるとコメ騒動は急速に鎮静化しました。
(当時大学生だった私も未だに覚えています。タイ米を購入していましたが、世間で言われているよりはずっと良い味だったと記憶しています。なお、翌年の夏は(去年の夏を経験するまでは)私の体感上で最も暑い夏でした。)
さて、自主流通米価格形成機構は90年に市場原理の導入を目指して始まったわけですが、93年の大凶作は政府管理の限界が露呈した年でもありました。
コメ増産が至上命題であった戦後には食糧管理法で生産や価格を統制する時代が続きました。
昭和四十年代にコメが余剰に転じると、政府の事実上の管理下で、民間が流通を担う自主流通米が広がったのですが、不作が鮮明になると、こうした正規ルートへの出し渋りが相次いだのです。
今、一人当たりの消費量はピーク時の半分程度で、08年産においては十万ヘクタールの減反上積みが必要とされています。
不作と政策以外に価格が上がらない日本のコメに、国際的な食糧価格高騰の流れは訪れそうにありません。
【後日記】『農業生産法人の設立要件緩和を』
日経5/14記事より。経済財政諮問会議の民間議員は本日の会合で、農業生産法人設立への要件緩和を求める、としています。規制撤廃を促し、参入企業による自由な経営が、安価で質の高い農産物を生むと考えています。
【後日記】5/15の日経によればイオンが販売しているPB商品(米)を2010年産で08年産比2.5倍に増やすそうです。JAとだけではなく農業法人(秋田県)とも契約を結び、販売価格を市販同等品の二割安に抑える見込みです。
【後日記】『リサイクル飼料使った豚肉販売 イオン』
5/31の日経によればイオンが六月から食品廃棄物のリサイクル飼料で飼育した豚の肉を関東の55店舗で販売するそうです。改正食品リサイクル法に基づく「再生利用事業計画」の認定を取得、市町村の単位を超えて食品廃棄物を回収できる体制が整ったとしています。
改正法に対応した再生利用事業計画の認定を受けるのはイオンが初めてになるそうです。
【後日記】『官房長官表明 減反政策見直しを』
6/1の日経によると政府高官が減反政策見直しに言及するのは初めてとのことです。既にEUでは穀物価格高騰を受けて減反政策の完全撤廃を検討。自民党内でも「日本の活力創造特命委員会」(委員長・谷垣禎一政調会長)が減反政策見直しを提言する方向だそうです。
減反政策は1960年代後半から始まったコメ余りを受けて71年から本格的に導入されたそうで、政府は代わりに小麦などを生産するよう補助金を交付しているとのことです。
日経は、農家や農林族議員の反発が予想され、どれだけ抜本的な改革ができるのかは未知数、としています。
【後日記】『食料危機の解決に短期と長期の視点を』 (日経6/4社説より抜粋)
長期的には、日本を含め世界規模で食料生産を拡大する必要がある。日本の食料自給率はカロリーベースで39%と、先進国でも目立って低い。自給率を高める知恵を絞るべきだが、その目的を大義名分として市場を閉ざしたまま国内農業を保護する発想は誤っている。
自給率の向上は国内での生産性の向上が絶対の条件となる。数年前までは、国産と輸入農産物の価格差を埋めるのは「不可能」とみられてきた。国際価格の上昇で国産の高品質の果実ばかりでなく、主食であるコメも価格差はぐっと縮まった。
一方で耕作放棄地が増えている現実も踏まえ、農業に競争力を持たせるように農政の発想を根本から転換すべき時が来ている。高率関税という防壁だけに頼り、国内価格を人為的に高く保つ政策は、国内農業を強くすることにはつながらない。今回の食料危機は日本の農業に改革の加速を迫っていると考えるべきだ。
世界的な農産物の生産と消費の偏在を解消するには、農産物の貿易を円滑化する手段を講じるべきだ。グローバル経済では工業品と同様に農産物も自由貿易が大原則だ。輸出規制も輸入規制も原則に反している。
という内容です。要は何事もつまらん小細工を弄す必要はない、ということです。そもそも消費者に理念があれば、少々高くても国産を買うので関税云々は関係ないし、むしろ規制撤廃によって国産の競争力UPが図れるなら長い目でそっちの方がずっと良いわけです。
【後日記】『三菱化学、植物工場に参入』
野菜栽培ベンチャーのフェアリーエンジェル(京都市)に二億五千万円を出資するそうです。6/5の日経より。フェアリーが福井県美浜町で建設中の工場で今秋から共同実験を始めるそうです。毎時二十キロワット分の発電能力を持つ太陽電池と一千~二千個のLED照明を導入、一~二年かけて最適な育成条件を探る、としています。
★植物工場・・・人工光や液体肥料を使い、温度や湿度などを制御しながらレタスなどの野菜を効率的に育てる施設。天候に左右されない安定生産が可能なうえ、空間を有効活用できるため単位面積あたりの生産量も通常の農地より多い。国内に約四十カ所あるとされる。都市部の地下や廃工場内などでも栽培でき、産地から消費地までの輸送距離短縮にもつながる。
【後日記】『減反政策やめ増産目指せ 支援は直接支払いで』
6/10の『経済教室』は食料高騰下の農業政策㊤です。執筆は山下仁・前農林水産省農村振興局次長です。以下に要約します。
各国の貿易政策で、国際農産物市場は各国の国内市場と分断・隔離されている。各国は国際価格低迷時には関税で安い農産物が入らないようにし、国際価格が高騰すると輸出税をかけたり輸出数量を制限したりして国内消費者への供給を優先するからである。
工業製品と異なり、穀物は生産量の15%が貿易されるに過ぎず、僅かの需給変動が貿易量や国際価格を左右する。1973年に穀物価格が三~四倍に高騰し、食糧危機が叫ばれた折、世界の穀物生産は三%減少しただけだった。
95~97年に穀物の国際価格が上昇した際、EUは輸出補助金を止め輸出税を課して途上国への食料供給より域内市場を優先した。現在、インド、ベトナムが輸出を禁止し、ロシア、中国は輸出税をかけている。
ウルグアイ・ラウンド交渉で、農産物に関し日本は輸出禁止などの輸出数量制限措置を規制することを提案した。しかし、インド代表から「不作の時に国内供給を優先するのは当然」と反対される。「これまで国内農業を保護するため高関税で輸入しないと言いながら、困った時には輸入させろというのは虫が良すぎる」との指摘もある。インド代表が言うように、国内で飢餓が起きているのに他国に輸出しろというのは現実的でない。
日本は高関税で支えられた高い農産物価格によってコメなどを保護しながら、一方で麦やトウモロコシなどを大量に輸入し世界一の農産物輸入大国であり続けた。食料自給率の低下は食生活の洋風化が原因とされているが、そうだとしても、米価を下げ麦価を上げる政策をとれば、これ程までには低下しなかったろう。60年代には米価を大幅に引き上げる一方、麦は生産者価格を物価上昇程度しか上げず、消費者価格はむしろ引き下げられた。
高米価はコメ消費減に拍車をかけた。一人当たり消費量は過去四十年間で半減したが、コメは生産が刺激され過剰となり、70年から減反や転作による生産調整を続けている。一方、麦の生産量は、その後の振興策にも関わらず100万トン強と60年の四分の一の水準に止まる。現在でも500万トン相当のコメを減産する一方で700万トン超の麦が輸入されている。
95年の食管制度廃止後も米価を維持しようと生産調整が続いている。これは供給制限カルテルであり、高い価格というコスト負担を強いられているのは消費者である。にも関わらず、生産調整面積が110万ヘクタールと水田全体の四割超に達しているのに、米価はむしろ下落傾向にある。生産調整では、麦や大豆などへの転作を通じ、自給率向上を狙い補助金を支払うのだが、実際に作物が植えられているのは43万ヘクタールに過ぎない。米価を維持しようとすれば生産調整を更に拡大する必要があるが、農家の側に、もはや減反は限界との意見が強い。
公共事業などで110万ヘクタールの農地を造成したのに、逆に260万ヘクタールの農地が宅地などへの転用と耕作放棄で消滅した。今では摂取カロリーを最大化できるイモとコメだけを植えれば辛うじて日本人が生命を維持できる460万ヘクタールが残るのみだ。農業には農産物供給以外にも、水資源涵養や洪水防止といった多面的機能があると言われているが、それも米作の生産装置である水田を水田として利用してはじめて発揮できることを認識すべきである。
生産調整と価格維持を軸とした従来のコメ政策の誤りはもはや明らかである。今後四十年間で一人当たり消費量が更に半分となれば、2050年頃にはコメ消費量は現在の850万トンから350万トンになるだろう。生産調整は210万ヘクタールに拡大し米作は50万ヘクタールで済んでしまう。
筆者の試算では、生産調整を止めれば米価は現在の中国産米輸入価格を下回る約9500円/60キログラムへと低下し、国内需要も1000万トンに拡大する。食管制度以来、農業団体は「米価を下げると農業依存度の高い主業農家が困る」と反論してきた。ならば現在の14000円から価格が下がった分の約八割を彼らに補てんすれば良い。流通量700万トンのうち主業農家のシェアは四割なので約1600億円で済む。これは生産調整カルテルに参加させるため農家に払っている補助金と同額である。
主な所得を農外から得ている兼業農家も主業農家に農地を貸せば現在年10万円程度の農業所得を上回る地代収入が得られる。主業農家の規模が拡大してコストが下がれば、受け取る地代も増加する。
財政的な負担は変わらない上、価格低下で消費者はメリットを受ける。更に、日本の人口は減少するが世界の人口は増加する。これまで国内需要にしか目を向けてこなかったことが農業のじり貧を招いたが、需要先を海外にも広げるのが良い。価格が安くなったコメを日本が400万トン輸出したとしても中国の穀物需要の1%に過ぎない。食糧危機が生じた際には、輸出していたコメを国内に向けて飢えを凌げば良い。
EUも生産調整を廃止しようとしている。筆者は数年前からコメの生産調整廃止を主張してきたが、農政は抜本改革に後ろ向きだった。政府首脳からも減反見直しを示唆する意見が出ているこの時期こそ、戦後の消費者負担型農政から脱却し、輸出によって農業を縮小から拡大に転じる好機である。これこそが日本が食糧難時代に行える国際貢献であり、かつ、日本の食料安全保障につながる政策である。
【後日記】『国産への切り替え着実に』
6/11『経済教室』食料高騰下の農業政策㊦です。執筆は大澤信一・日本総合研究所主任研究員。以下、備忘目的で部分的に抜粋し転載しています。
1960年代以降の経済成長の過程で実現した洋風の豊かな食生活の構造は、主として畜産飼料と植物油脂原料の輸入で支えられている。自給率は前者が25%、後者に至ってはわずか2%である。この輸入穀物を栽培面積で換算すれば約1200万ヘクタールにも及び、それは国内全耕地面積の2.5倍強、国土面積の三分の一にも相当する。
この点で、油脂や畜産品の摂取量が少ない、伝統的な和風の食事に目をむけることは重要な課題となろう。ただ、いずれにせよ農業を再生し農地面積を拡大して輸入穀物の大きな部分を国産化するという構想は超長期にはともかく、短中期には現実的な改革論とはいえないのである。
とはいえ、海外との関係強化だけで国内が手をこまぬいているわけにはいかない。国内農業がまず取り組むべきは消費者ニーズを見据えて川下から国産農産物への切り替えを進めることだ。価格の優位性が求められる油脂原料や家畜飼料では輸入品の国産代替は基本的に難しい。だが最近の輸入穀物価格の高騰や食の安全への意識の高まり、食マーケットの成熟化、食品リサイクル法施行など環境問題をめぐる制度的な枠組みの変化などで、新しい可能性も芽生えており、優位性を発揮できる分野もある。
国内需要量約1650万トンのトウモロコシは、特に家畜飼料として重要な穀物であるが、ほぼ100%輸入に依存している。日本の輸入量は世界の全トウモロコシ貿易の五分の一を占め、その大半を米国に依存している。(ちなみに、隣欄の『資源と経済⑪』によると、日本は人口一人当たり銅使用量で世界一だそうです。関係ないけど。by けんchang)
家畜飼料の代替策として、飼料米の導入や、2001年五月施行の食品リサイクル法で20%リサイクルが義務付けかれた食品残渣の飼料活用などが取り組まれてきた。最大のネックはコストであったが、今回の飼料価格高騰で、飼料米や食品残渣の活用には大きなきっかけが生まれている。この契機を積極的に活用すべきである。
【後日記】6/19の日経より。セブン&アイ・ホールディングスが三年以内に全国十カ所に農業生産法人を新設、生産した野菜を参加のイトーヨーカ堂全170店で販売する、としています。ヨーカ堂の生鮮野菜の国産比率を現93%から100%近くへ引き上げる意向です。なお、年間の野菜・果物の販売額はヨーカ堂だけで年一千億円あります。
八月には千葉県富里市で農家と共同で農業法人を設立(ヨーカ堂は10%を出資)し、社長にはヨーカ堂社長の亀井氏が就くとのこと。農家から農地を借り、ヨーカ堂が農作業に社員を派遣、2ヘクタールの農地から始め、近隣農地などを借り生産規模を拡大する、としています。
★企業の農業参入・・・高齢化に伴う農業の担い手不足や増大する耕作放棄地、農業の低い生産性などを改善するため、政府が段階的な規制緩和で後押ししている。食品メーカーや外食産業などの他、公共工事に代わる収益源を求めて、地方の建設業などが手掛ける例が多い。
農地取得も可能な農業生産法人に企業が資本参加する場合(出資規制あり-一社につき上限10%)や、「農地リース方式」で企業が市町村から農地を借りて営農する場合(05年から全国で認められた)とがある。(一般企業が直接、農地を取得することは認められていない。)
【後日記】6/20の日経によるとセブンの狙いには食品資源の循環網構築もあるそうです。背景に昨年施行の改正食品リサイクル法があると見られます。同法は小売業へ12年までに食品廃棄物のリサイクル率を45%まで高めるよう義務付けています。ヨーカ堂が千葉県富里に農業法人をつくり、県内ヨーカ堂六店舗から出るごみ肥料を直営農場で活用、生産した野菜が同じ六店に並ぶ、としています。
【後日記】『長野・ズッキーニ 土との相性が生む甘み』
8/10の日経プラス1からの記事からです。
長野県、橘自然農園の北沢さん(73)は地元石材店の三代目社長当時、60歳に近づいてから、これからは何か次世代に残したい、と思い立ったそうです。
以下に部分抜粋、転載します。
「農業の『の』の字も知らなかった」という北沢さんだが、子どものころに食べていた卵や野菜の味を再現したいという思いがあった。あのおいしさは郷愁によるだけでなく、きっと理由があるはずだ。昔は食べ残したものが、鶏のえさになり畑の養分になっていた。当時の習慣を再現してみよう。しかも地域で問題になっている生ごみを活用できるかもしれない。
そう考えて、早速、石材店の作業場を鶏舎に変えて、養鶏を始めた。生ごみを周辺の小学校やホテルから毎朝回収し、菌を加えて発行させ、それを餌にすることにした。だが近隣からは、生ごみを集めればにおいがたつ、と苦情がでる。土壌改良の本を読んだ北沢さんは、生ごみが完全に発酵すれば、悪臭は出ないと考え、「もしにおいがでれば養鶏はやめる」と宣言。幸いにおいはなく、その後、苦情は届かなかった。
養鶏が軌道に乗ると、土地を借りて野菜づくりを始めた。鶏のエサには不向きな堅い野菜にもみ殻と鶏のフンを混ぜ、それらを発酵させて堆肥をつくった。土地を耕す前に自家製の堆肥をまいて混ぜ合わせていく。数年間根気よく続けていくうちに、野菜に適した土壌に変わっていった。生ごみが鶏の餌になり、鶏のふんが堆肥となり、そこでとれた野菜は小学校やホテルに行き、再び生ごみが回収され、と北沢さんを中心に循環の輪が広がっていった。
現在はJAS有機農産物の認定を受け、北沢さん夫妻とパート六人が、キュウリ、ナス、トマト、オクラ、インゲンマメ、シシトウ、長ネギなど十数種類の野菜を育てている。
中でもホテルの料理人、全国の自然食品を扱う仲買人からも評判の高いのが、ズッキーニだ。
ズッキーニは三月後半から種をまき六月半ばから収穫が始まる。途中で肥料などを加えることはない。草を抜くのが二回。しかも抜きすぎてもいけない。
「全部抜くと、悪い虫を食べてくれる虫までいなくなっちまう」という北沢さんは、少しくらい害虫に食べられても気にもとめない。それで育たないようだったら、その野菜はその土地に向いていないということ。過剰に手をかけなくとも育つ野菜こそがその土地に合った野菜であり、それを選んで育てればよい。
北沢さんの畑では一本の株から通常の倍近くの実が収穫されるそうです。
【後日記】『農政無策なお』
日経8/17『食料危機と日本農業㊤』から部分抜粋、以下転載します。
長野県東御市でコメを作る永井農場(永井忠社長)は作業受託も含めると九十ヘクタール強を手掛ける。永井進専務(37)は「肥料や燃料など生産コストは上昇している。大規模化で少しでもコスト削減に取り組みたい」と話すが、二割の生産調整を割り当てられた。「生産調整はやる気のある農家の意欲をそぎかねない」と危機感を持つ。
群馬県高崎市でコメ、小麦など三十八ヘクタールを耕す紋谷巌さん(54)の農地は百八十に分かれている。農業をやめた地主から借りて増やした農地は、住宅や診療所などが目立つ水田地帯に点在する。「もっと増やしたいが、まとまった優良な農地ほど転用されてしまう」と嘆く。
宅地などへの転用申請が相次ぎ、市の農業委員会も容認する。将来の転用を期待して手放さず、耕作放棄地となる例もある。このため農地は飛び地状態になり、効率が落ちる。紋谷さんは「土地利用政策が無策のまま外国と競争するのは無理」と憤る。
農地の税負担を見直し「所有から利用」に転換する農地改革は停滞。コメ、麦、大豆などの大規模農家に限定して補助する担い手育成策も、小規模農家への所得補償を主張する民主党が昨年の参院選で勝利したことで迷走している。農協は米価維持へ生産調整に固執する。国際情勢から目をそらし内向き農政を続ければ競争力向上は遠のく。
【後日記】『国産回帰、企業も参入』
8/18の日経「食料危機と日本の農業㊥」です。
首都圏を中心に十生協が加盟するパルシステム生活共同組合連合会(東京・文京)がコメを飼料にした豚のもも肉を発売したそうです。飼料用トウモロコシの輸入価格上昇で、飼料米の割高感が薄れたといいます。
輸入小麦の価格も上昇。愛媛県西予市では市立の幼稚園と小中学校の給食で、パンの原料を米国産から市内で収穫した小麦に切り替えたそうです。
東急ストアは約千平方メートルの遊休地を茨城県小美玉市周辺農家から借り野菜栽培を開始。同社の青果仕入れ担当社員が収穫。「生産者の顔が見えるどころか店頭にいる。これほどの安全・安心はない。」(同社青果部長)
契約農家二十軒を加え、「茨城農園」と名付け組織化。野菜を直接仕入れることで「青果市場から買うより約15%安い」(同)といいます。契約農家は安定的に買い取ってもらえるため、計画的に生産できるとのこと。
イトーヨーカ堂は千葉県内の農家などと共同で農業生産法人を設立するそうです。
東急ストアとヨーカ堂の共通点は食品廃棄物の有効利用にあるといいます。カット野菜工場から出る葉くずや店舗の食品ごみを肥料にして農場に供給するのだそうです。割高と敬遠されてきたリサイクル堆肥が競争力を持ち始めたとのことです。
企業参入は非効率な日本農業に生産性向上を迫り農業現場に新風が吹き始めたようですが企業参入には壁があるともいいます。農業生産法人をつくると登記の負担や「事業の過半は農業」という制約があり、そのまま参入すると農地を所有できず耕作放棄地が多い区域でしか借りられないのだそうです。
【後日記】『企業経営促す農業の新補助金』
農林水産省は農家と農業法人との連携や、小売り・外食産業と生産者による農業法人の共同設立などを支援する新しい補助金制度をつくる方針だそうです。全国から募集してコンペ方式で選び、来年度に十件程度を支援するとのこと。8/24の日経より。
【後日記】『「エコ野菜」なのになぜ割安』
8/24の日経、「エコノ探偵団」より。
有機栽培は化学肥料や農薬を使わないなどの基準をクリアした農産物、特別栽培は一般の農法に比べ化学肥料と農薬の使用量を50%以上削減して栽培した農産物を指すそうです。
最近は特別栽培の野菜が増加、一般の野菜との価格差も縮まっているようです。農水省の調べでは国内野菜の年間生産量は約千六百万トン。NPO法人日本有機農業生産団体中央会によれば特別栽培野菜は野菜生産量の10%弱を占めるといいます。
農家との直接契約・仕入れの増加が価格低下の理由の一つだそうです。農家は安定的に農産物を買い取ってもらえるため生産計画を立てやすくなり、消費増加に伴い生産量を増やせば農業機械の利用などに無駄が少なくなり単価が低下するとのこと。一般栽培より特別栽培が安くなる場合すらあるようです。
また、これまで化学的に窒素、リン酸、カリウムを主成分とした化学肥料と、有機物からつくった有機肥料との価格を比べると有機肥料の方が高かったといいますが、リン鉱石や尿素、塩化カリウムなどの高騰で逆転現象が起きているそう。
全農によるとこれまでの一般的な化学肥料の価格は二十キログラムで約千二百円だったそうですが、先月から約二千円に値上げしたそう。一方、日本ライフ(東京都狛江市)の鶏ふんに鉄分などを混ぜて発酵させた有機肥料は二十キログラム千八百九十円のまま。「鶏ふんなどの原料は産業廃棄物であり、原料コストはほとんどかかりません。」(同社常務)
サンケイ工業(鹿児島県鹿屋市)の志布志事業所では周辺地域から大量に調達できる焼酎かすを木くずに混ぜて発酵させた有機肥料の製造に成功。価格は二十キログラムで千三百六十円だそうです。焼酎かすとは芋などの原料から焼酎をつくった後の残りの液体で従来は廃棄されることが多かったといいます。「かすに含まれる固形分は窒素やリンのかたまりなのです。」(同社取締役所長)
【後日記】『”食料自給率向上”は的外れ』
8/28の『経済教室』は明治学院大の神門教授でした。以下に要約します。
第二次大戦後、世界の穀物需給は一貫して緩み続けてきた。価格の長期的推移をとらえるため、世界の代表的指数であるシカゴの穀物価格を、名目価格ではなく実質価格ベースでみると、第二次大戦後は、大きな振れを繰り返しながらも、おおむね穀物価格は低下基調だった。特に90年代末は最も穀物価格が安かった。ここ数年、上がったといっても、まだ80年代の平均水準にも届かないし、短期的な変動の範囲内のようにもみえる。
そもそも世界人口が約2%という驚異的速度で伸び、世界的に可耕地が不足に陥った60-70年代の方が供給不足の不安ははるかに大きかった。だがその時代でさえ、農業技術の向上で単収が増加し、結果的に世界人口を上回る速度で穀物は増産された。
世界各国で飢餓や食料をめぐる社会的騒乱が目立つのは、絶対量が世界的に不足しているのではなく、分配の不平等がおきているととらえるべきだろう。米ノースカロライナ大のポプキン教授は世界の肥満人口は十億人を超えると推計している。これは飢餓人口を上回り、しかも増え続けている。世界全体では食料は十分に生産されているのだ。
先進国では総じて農業団体の政治力が強く、戦後、欧米は巨額の農業補助で穀物生産力を高めてきた。余剰農産物を補助金付きで輸出したため穀物の国際相場が下がり、農業保護の余裕がない貧しい国々の穀物生産は大打撃を受けた。95年発足の世界貿易機関(WTO)は先進国に国内農業補助金の削減を義務付けた。だが抜け穴だったバイオエタノール製造工場への補助金に米国などが目をつけ、穀物価格をつり上げようとした。そこにオーストラリアの大干ばつが重なったのが今回の穀物急騰だとみるべきだ。
日本が食料自給率を高める理由として、欧州、特に70%にまで引き上げた英国の例がよく引き合いに出される。しかしこの裏に、前述の多額の農業助成金があったことを忘れてはならない。助成金はモルヒネのようなものであり、国内農業はますます助成金依存の脆弱体質になり、かえって国内農業は不安定になる。
そもそも、飽食で、消費者が食の利便性を重視する日本にあっては、カロリーベースの食料自給率は”数字遊び”の意味あいが強いともいえる。カロリーベースの自給率を引き上げるには、例えば、今でも国産でまかなえるイモの消費を増やせばよい。しかし、それで食に満足する日本人はまずいない。
国土が狭い日本では、平場の優良農地ほど住宅や商業施設の建設候補地として狙われ、こうした農外転用が桁違いの利益を農地所有者にもたらす。農外転用規制をはじめとした農地利用に関する法制度の運用がずさんで、関係者の政治力次第では諸規則が有名無実化されるため、農地本来の利用がなされず、農外転用を当て込んだ農地所有が蔓延。農業にたけたものに農地が集積するという通常の市場機能が働かず、農業が沈滞化している。
【後日記】『北総でいち早く野菜加工』
9/8の日経『農業再生に挑む①』からです。
千葉県香取市に本拠を置く農事組合法人・和郷園(木内代表理事=40)には全国、時には海外からも年間五千人以上が訪れるといいます。視察は有料で、最高で一人三千五百円にガイド料が一万五千円だといいます。
日本有数の農業地帯、房総半島北部(北総)の専業農家等が和郷園に出荷しているとのこと。販売・加工は木内氏が社長を務める株式会社の和郷が統括。
木内氏は「農業は農村の基幹産業」と、牛糞・鶏糞、野菜クズなどを堆肥や飼料として再利用する「静脈産業」や、農場体験などグリーンツーリズムへの重点投資も検討しているそうです。
【後日記】『業務用野菜拡大を模索 国内産地、安定収入が魅力』
農業生産法人、トップリバー(長野県御代田町)はレタスやキャベツなど生産し、その七割が業務用だそうです。品種など工夫し面積当たりの収穫量を改善、流通コストも段ボールに代えて繰り返し利用できるコンテナで出荷することで二割削減したといいます。営業部門も持ち、専門の社員が取引先を開拓。同社社長は「四十-五十の安定した取引先があり、予定生産量に対して余裕を持った契約をすれば十分利益が出る」といいます。
しかし多くの生産者団体は営業部門を持たず、「メーカーの担当者が産地を飛び回り契約先を探すことがほとんど」(食品メーカー)で、産地側には販路開拓のノウハウがないとのこと。独立行政法人の農畜産業振興機構は「加工・業務用野菜産地と実需者の交流会」を始めたそうです。
農水省も、コーディネーターの役割を果たす”中間事業者”の育成に取り組むそうです。中間事業者が複数の生産者と外食・食品加工会社を結び付けることでリスクを低減。「生産者が加工・業務用に取り組みやすい環境を整備したい」(農水省生産局生産流通振興課)としています。
以上、9/20の日経から。
【後日記】『農水省 過剰米対策、発動へ』
農水省の発表では九月十五日時点での作況指数が102(平年を100とする)になったとのこと。豊作によるコメの価格下落を防ぐための過剰米対策は十月十五日時点の作況が101以上の場合に自動的に発動されるのだそうです。
過剰米対策は「集荷円滑化対策」と呼ばれ、主食用のコメの価格下落を防ぐために、一定量のコメを市場から隔離して保存し、加工用として使うとのこと。
九月十五日時点では十万トンを超える過剰米が発生する見込みだそうです。日経10/1より。。。てか、100と101じゃ、1しか違わないじゃん・・・
【後日記】『食品廃棄物から作った肥料活用』
10/4の日経記事にはユニーと連結子会社のサークルKサンクスが、愛知県経済農業協同組合連合会(名古屋市)などと連携し、店舗から食品廃棄物を回収して肥料化、農家で野菜や果物を栽培する、とありました。将来的には年間約千二百トンの廃棄物を使い、農産物約二千トンを生産する計画だそうです。
【後日記】『セブン&アイが米粉食品』
ホクレン農業協同組合連合会は09年生産分からセブン&アイ専用の農場を設けて、米粉用のコメ栽培を始め、日本製粉などが米粉に加工するそうです。セブン&アイは2010年をメドに複数の商品で米粉を採用、配合商品の本格展開に乗り出す、としています。初年度に最大二千トン(玄米ベース)程度の米粉を利用する見通しで、将来は年間二万トンの利用を目指すとのことです。日経10/11より。
【後日記】『農地借用を原則自由化』
農林水産省が近く政府の経済財政諮問会議に示し、来年の通常国会で農地法などの改正法案を提出する。農地改革の狙いは農地減少への歯止めと大規模化の二つ。農地の不正転用の罰則を強化し、バラバラの農地を集める仕組みもつくる。52年に始まった「自作農主義」から”農地は使っていることが重要”と方針を転換する。
★農地法・・・田や畑など農地の所有や賃借、転用について定めた法律で1952年に制定した。農地は耕作者自らが所有するのが最も適切という、自作農主義の原則をとっている。改正を重ねて、一部の法人に農地取得を認めてきたが、制限が大きく、抜本改革にはいたっていない。
農地法改正などの農地改革が急務となっている背景には農地の減少がある。30年前に約550万ヘクタールあった農地は転用などで2007年には465万ヘクタールに減少。道路建設や商業施設の開発などの転用で農地が高く売れることを農家が期待し、本当に必要な農家に農地が集まっていないことが問題との指摘もあり、改正して農地の総面積を確保し、集約化を促す。
以上、日経11/28より。
【後日記】『戦後農政の主な出来事』(2009/1/1日経より転載)
1945年・・・第一次農地改革
1946年・・・第二次農地改革
1960年・・・農林水産物121品目自由化
1961年・・・農業基本法公布、大豆輸入自由化
1967年・・・コメが史上空前の豊作
1970年・・・総合農政の基本方針を決定、コメの生産調整実施
1972年・・・消費者米価統制撤廃
1978年・・・日米農産物交渉で牛肉・オレンジなど輸入拡大妥結
1981年・・・食管法改正(コメ配給制など廃止)
1986年・・・ガット・ウルグアイラウンド始まる
1987年・・・31年ぶりに生産者米価引き下げ
1988年・・・牛肉・オレンジ輸入自由化決定
1990年・・・自主流通米価格形成機構設立
1993年・・・コメの部分開放決定、戦後最悪の凶作
1994年・・・平成の米騒動で、タイなどの外国産米を緊急輸入
1995年・・・世界貿易機関(WTO)発足
2001年・・・国内で初めてBSE(牛海綿状脳症)発生
2002年・・・雪印食品など、食の偽装事件相次ぐ
2003年・・・食品安全基本法公布
2004年・・・改正食糧法施行、コメ販売が完全自由化
2006年・・・ポジティブリスト制度施行、米国産牛肉の輸入再開
2007年・・・船場吉兆や赤福など、食品の偽装・不正表示問題相次ぐ
2008年・・・中国製冷凍ギョーザ事件で食品の安全意識高まる
【後日記】『国産 海外で高評価』(2009/1/1日経より転載)
農作物の国内市場は人口の減少などで長期的に縮小が見込まれる。このため新たな販路を海外に求める動きが広がっている。高品質な日本の農作物に対する海外の評価は高い。検疫や輸送コストなどの課題をクリアしながら、輸出額は増加傾向だ。
全国の農業生産法人など約千七百社が加盟する社団法人日本農業法人協会(東京・千代田)は2008年、香港や台湾、シンガポールで現地の卸会社などバイヤーとの商談会を開いた。十月の香港での商談会には農業生産法人二十三社が参加し、「その場で契約にこぎつける事例が目立った」(日本農業法人協会)。
農林水産省は20年までに農林水産物の輸出額を一兆円まで引き上げる目標を掲げる。07年の輸出額は四千三百三十七億円。00年の1.8倍に増えた。
輸出先も北米やアジア、オセアニアなど多岐で、品質が高い日本の青果物は世界から注目を集める。台湾では青森産リンゴや北海道産ナガイモ、香港は福岡産イチゴ「あまおう」、オマーンは静岡産マスクメロンなどの人気が高い。
輸出の壁は相手国の検疫と高い輸送コストだ。検疫は各国ごとの基準があり、日本より厳しいことも少なくない。船や飛行機で運ぶため、輸送コストがかさみ、店頭価格が高くなる。青森産リンゴは現地の高級スーパーで、一個千-二千円の高値で売られるケースもあるが、安全・安心のイメージから競争力を保つ。
為替の円高や金融危機などの逆風はあるが、「アジアの富裕層を中心に日本産農作物への需要は根強い」(農水省生産局生産流通振興課)。輸出で生産が拡大し、「成長産業」と位置づけられれば新規就農者を呼び込む可能性を秘める。
【後日記】『コメ政策転換に壁』(2009/1/6日経より転載)
石破茂農相は五日、コメの生産調整(減反)について「タブーなく議論する」と延べ、白紙の状態で制度を見直す意向を示した。消費低迷を背景に生産量を調整して米価の暴落を防ぐ生産調整はコメ政策の肝。農家の所得対策や安価な輸入米の位置づけなど、自然と検討課題は多岐にわたる。水田が整備され自給率の高いコメは日本の農産物の根幹でもある。政策見直しは戦後農政の一大転換点になり得るだけにハードルは高い。
生産調整の開始は1971年。主食用米が余ると価格が下がって農家の収入が減るため、事前に作付面積を減らして麦などに転作してきた。ただ「現在のコメ政策はどれも中途半端」という声が農林水産省内でも上がるほど、継ぎはぎだらけなのが実態だ。
例えば2007年・08年産米。余剰気味だったため緊急時の備蓄用として急きょ国が買い上げを決定。価格の下落防止に取り組んだが、生産調整せずたくさん作った農家も恩恵を受け、不公平感も呼んだ。農水省は昨夏に備蓄米制度の見直し案を練り、米価主義からの脱却を狙ったが、農薬汚染の「事故米」問題の対応に追われ進展していない。
また、仮に生産調整を縮小・廃止すればコメの生産が増え価格が急低下する可能性が高く、農家の所得対策も避けられない。現在も転作を奨励する補助金を出しているが、補助額が膨らむことになるため財源の調整も必要。輸入の完全自由化と、年に約七十七万トンの輸入義務がある「ミニマムアクセス米」の位置づけの見直しも浮上してくる。
【後日記】日経2009/1/24より抜粋。
農林水産省は二十三日、需給調整のため市場から隔離する2008年産米の買い入れ銘柄と数量を発表した。三十四道府県の10万8千トンを対象とする。
買い入れ予定価格はコメ価格センターでの入札結果や出荷団体と卸会社の相対取引価格などを参考に設定。二月六日に入札を実施する。
作況指数102の豊作となった08年産米の収穫量は866万トンの見込み。需要見通しの855万トンを上回る。余剰分を買い入れて加工原料などの用途に回すことで、主食用米の値下がりを防止する。
【後日記】『世界経済危機下の日本の農政改革』
2009/1/26の『経済教室』は東大の本間教授でした。一部を抜粋します。
作付面積が5ヘクタール以上の農家は2%にすぎず、2ヘクタール未満の農家が九割以上を占め、0.5ヘクタールに届かない農家が42%にのぼる。しかも小規模農家ほど高齢化が進んでおり、1ヘクタール未満の経営主の平均年齢は六十五歳を超える。
これらはいかに日本の稲作が零細かを示しているが、小規模農家が必ずしも貧困なわけではない。1ヘクタールに達しない農家では農業所得が赤字か極小だが総所得は四百万-五百万円である。農業所得が総所得の五割を超えるのは5ヘクタール層からで、20ヘクタール以上では農業所得は一千百万円を超える。だが10アール当たりの経営費(自家労賃など帰属支払いは含まない)は規模が拡大しても大きくは下がらない。
小規模・赤字でも稲作を続ける理由は、自家消費用の生産のためとか、相続税・固定資産税の節税のためとか、将来の転用収入のためとか、または単に農業が好きだからといったことがあげられる。一方、規模拡大のメリットが小さいのは、経営耕地が分散し、効率的経営が行えないからである。60ヘクタールの経営が百八十カ所に散在しているなどの例もまれではない。
【後日記】『耕作放棄地の貸出新制度 農地法改正案』(2009/2/14日経より転載)
農地の貸借を原則自由化することを柱とする農地法などの改正案の全容が十三日、明らかになった。株式会社などが農地を原則的に自由に借りられるようにするほか、大規模化を促すために、農地の貸し付けなどを仲介する仕組みも本格的に導入する。所有者が分からなくなっている耕作放棄地を自治体が貸し出す制度も新設する。
今通常国会に提出する。改正案は農地の「所有から利用」への転換を軸にしている。農地にかかる相続税も見直し、高齢化などで農業を続けることが難しくなった所有者が貸しやすくする。民法で二十年以内となっている農地の貸借期間を最長五十年にする。基準を満たさない転用については罰金の上限を三百万円から一億円に引き上げることや、企業の農業生産法人への出資制限の緩和も盛り込んだ。
耕作放棄地の拡大を防いだり、不正な転用で農地が減ることを防ぐ狙いがある。
【後日記】『三菱化学、中東で野菜工場』(2009/2/21日経より抜粋)
三菱化学は屋内で野菜を効率的に栽培する「野菜工場」を中東で事業化する。水の使用を抑えながら収穫量を増やせる特徴があり、水資源の少ない中東の農業関連企業に設備を納める商談に入った。世界景気悪化で主力の石油化学事業が苦戦しているため、新規事業の育成を急ぐ。まず中東で事業化し、日本など他国での販売も目指す。
野菜工場は太陽電池を電源とする発光ダイオード(LED)を照明に使い、工場のような密閉建屋で野菜を栽培する。昨年六月に野菜栽培ベンチャーのフェアリーエンジェル(京都市)に資本参加し、事業化に向けて四月にも実験を始める。早ければ年内に初の納入契約を中東企業との間で結ぶ。
【後日記】『農業担い手 つくばから 大分県と組み 加工まで伝授』
2009/3/2日経より転載します。
景気悪化で企業の人員削減が相次ぐ中、受け皿として農業への期待が高まっている。ただ、きつい仕事や不安定な収入などがネックとなり、人材が集まらないのが現状。こうした雇用のミスマッチを解消しようと、農業生産法人のワールドファーム(茨城県つくば市)は自治体と組み、担い手育成に乗り出した。
くじゅう連山や阿蘇外輪山に囲まれた大分県竹田市。自然豊かなこの地で、休耕地を農場に開墾したり、野菜の加工工場や研修施設の開設準備と慌ただしく走り回っているのは、ワールドファームの社長の上野裕志さん(44)だ。国産野菜を冷凍、乾燥し、加工用として販売する。
上野さんは本社工場や熊本県大津町の熊本工場で自社農場や周辺農家からキャベツやほうれん草、サトイモなどを調達。カットや冷凍、乾燥して食品メーカーや小売店に売る。中国製冷凍ギョーザの毒物混入事件以降、国産・安全志向の高まりで需要が急増。現在は年商三億円を超す。契約農家を増やしても、生産が追いつかなくなっていた。
竹田ではまず休耕地を直営農場としてホウレンソウや小松菜などを生産する。今年は十ヘクタールの圃場を確保、2010年までに約二十ヘクタールに広げる。現地の農家とも五十ヘクタールの契約栽培を予定。工場では弁当や学校給食用に加工する。
狙いは事業拡大だけではない。研修施設も造るのは、計画の柱が「若い農業のプロ」の育成にあるからだ。
「農業の世代交代という変化の波を起こしてみたい」と上野さん。「日本農業再生プロジェクト」と銘打ち、竹田で十人前後のリーダー的な人材を育成する。作物の育て方など農業実習から、会社経営の財務管理やコスト意識など様々な知識を三年程度、学んでもらう。その後、大分県内をはじめ全国各地で農業の指導者として新たな担い手を育成してもらう計画。
もっとも昨年十月の発表以来、「問い合わせてきたのはまだ十人ほど。思ったより少ない」。県内ではキャノンが非正規従業員の削減を進めるなど失業者が増加。雇用情勢が急速に悪化しているが、希望する仕事と、農業など人手不足の分野とのミスマッチがここにも表れた格好だ。
実は研修中は社員となり、賞与や雇用保険、労災保険などの福利厚生に加え、ローテーションで季節休暇の取得も可能だ。それでも「農作業のほかに工場経営、輸送なども行うので、決して楽とは言わない」。農業には何よりも意欲が必要と考えるからだ。
上野さんは茨城県南の農家に生まれ、農業に従事してきた。不安定な収入、過酷な労働環境、後継者不足といった現状を変えようと、00年に知人の農業経営者を誘って農業生産法人を発足。栽培から加工、配送まで一貫して手掛けることで物流コストを抑えるモデルをつくった。
担い手育成も当初からの思いだったが、最も熱心なアプローチを受けたのが大分県だった。県は08年度に「農業企業誘致プロジェクト」を発足、休耕地再生の経費などを補助する制度を設けていた。農業の将来に強い危機感を抱く担当者と意気投合した。
茨城や熊本でこれまでに採用してきた社員からは「農家に比べて給料制で安心してやっていける」「農作業だけでなく幅広く経験できるから、やりがいがある」といった声もあがる。「若い世代に農業の魅力と重要性をアピールしたい」。農業で雇用を吸収するという考えが一時のブームに終わらないよう、求職者を未来の芽とする考えだ。(つくば支局 高田倫志)
【後日記】『耕作放棄14.9万ヘクタール 農地に復元可能』(2009/4/8日経より抜粋)
農林水産省は七日、農作物が作られていない耕作放棄地についての初めての実態調査の結果を発表した。未調査分の推計をあわせて全国で二十八万四千ヘクタールがそのままでは農地として使えないことが判明。そのうち十四万九千ヘクタールは機械を使って草や木を抜くなどすれば農地として回復できるが、十三万五千ヘクタールは既に森林や原野になっており、復元が不可能と分かった。
【後日記】日経2009/4/29から『野菜工場の主な増産の動き』と題した表から以下、転載。
村上農園(広島市)・・・発芽野菜を15億円投じ増産
日本農園(広島県世羅町)・・・山梨県にサラダ菜の新工場
フェアリーエンジェル(京都市)・・・福井県にレタスなどの新工場
スプレッド(京都市)・・・8億円投じレタスなどの工場増設
成田食品(福島県相馬市)・・・もやしの生産量を1割拡大
サラダコスモ(岐阜県中津川市)・・・もやしを15%増産。新工場も検討
【後日記】『耕作学ぶ体験農場』(2009/5/8日経より転載)
東京都江戸川区は農家が小松菜などの栽培を指導しながら、本格的に農業を学ぶ体験農場「ファーマーズクラブ」を開設した。農地の担い手を育成し、都市農業が盛んな区内の農地を保全する狙い。当面は五十区画で運営する。
区内の農家から無償で借り受けた東葛西の農地に開設した。一区画の面積は四十平方メートルで、通常の区民農園の区画の2.7倍の広さ。トマトや小松菜など、区が育てる野菜を指定し、農家が月二回程度のペースで耕作指導する。利用料は年五万円。種や苗、肥料や農機具の利用料金、水道料金などを含む。
区によると、区内の2007年度の農業産出額は十五億五千万円で、東京二十三区で首位。一方、07年度の区内の農地は約七十四ヘクタールあるものの、宅地開発の影響で十年前と比べて約26%減少した。
区は「都市部の農地を減らさないよう、農地の担い手や、農業に理解のある区民を増やしたい」(生活振興部)と説明している。
【後日記】『企業の農業参入へ前進』(2009/6/18日経より転載)
農地の貸借を原則自由化する改正農地法が17日成立した。企業の農業分野への参入拡大に向け、制度面で一歩前進した形だ。改正に合わせ、農地を集約する取り組みも推進し、農作業の効率化を促す。耕作放棄地が埼玉県の面積に匹敵する規模に広がるなか、農地の有効利用で食料の安定供給につなげる狙いがある。
これまで企業が農業に参入する際、「農業生産法人」を設立すれば農地を所有できるが、出資割合の制限など設立時の制約が厳しかった。設立しない場合は農地を所有できないうえ、耕作放棄地が多い地域でしか農地を借りられなかった。
今回の改正を受け、企業は生産法人を設立しなくても農地を借りやすくなる。生産法人を設立する場合も出資割合が1社あたり10%に制限されていたが、企業の販売力をノウハウを生かす「農商工連携」として認定されれば、50%未満まで出資できるようになる。
農業分野は若年雇用の吸収源として注目されている。企業が農業に参入しやすくなれば、若年層の選択肢が広がり、農業に従事する機会が増える可能性もある。
【後日記】『コメ公設市場 正念場』(2009/6/27日経より転載)
公設市場のコメ価格センターが存在意義を問われている。生産者側は価格設定の自由度が低い入札を回避して相対取引にシフト。コメ余りによる価格下落懸念も重なり取引量が回復する兆しはない。わずかな落札数量で指標価格とされることへの疑問も強まっている。
「センターの入札が将来につながるのか、早いうちに結論を出さないといけない」。コメ卸業者の団体である全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)が今月開いた通常総会で、農林水産省の奥原正明食糧部長はこう切り出した。センターを所管する農水省の「最後通告」ともいえる厳しい言葉に緊張が走った。
2008年産米のセンターでの取引数量は9775トン。主食用米の収穫量865万トンに対して微々たる量だ。最大の売り手である全国農業協同組合連合会(全農)が上場の見送りを続け、入札は1月に2回開かれたのみ。04年に上場義務が廃止されてから入札回避の姿勢が鮮明になった。
買い手の全米販は「指標価格は必要で取引の活性化を」と訴える。08年産では農家の生産費増加などに配慮し、コメ卸各社は60キロ当たり平均1200円程度の値上げを受け入れた。価格転嫁の根拠を示す指標が必要との考えがある。
ただ個別の業者の行動は別だ。大手卸の幹部は「なくても困らない」と突き放す。業界は「建前と本音がかけ離れている」(奥原部長)状態だ。
センターは09年産から取引形態を見直す。秋から年末まで毎週だった取引を隔週とし、不落札が続いた時に落札下限を3%引き下げる値幅制限も廃止した。センターの山本領副会長は「売り手が躊躇するルールは除いた」と話す。全米販は全農に対して「09年産では相当数量を定期的に上場する」ことなどを求める要望書を出した。買い手があらかじめ購入希望を提示する制度の検討も始めた。
ただ取引の活性化は困難との見方が多い。高崎経済大学の吉田俊幸学長は「値下がりにつながりかねないセンター取引で売り手を全農に頼る仕組みは限界」と指摘する。農水省は08年度に約1200万円拠出した補助金を今年度は打ち切った。08年産から同省が公表を始めた相対取引価格を指標にすることも視野に置く。全米販の木村良理事長は「市場の状況を生産者が受け止めなければ過剰は続く」と警戒する。
生産者側が指標価格を見えなくしてもコメ余りの現状は変わらない。受給のシグナルを発する市場の機能不全は生産者にもマイナスで販売を担う全農にもはね返ってくることになりかねない。
★全国米穀取引・価格形成センター(コメ価格センター)・・・1990年に財団法人自主流通米価格形成機構として発足。食糧管理制度下で硬直的だった価格形成に、需給動向などを反映させ取引指標とすることを目指した。2004年の改正食糧法施行時に現在の名称に変更。センターの価格は政府備蓄米の買い入れ価格や農家への所得補償の基準となる
【後日記】『サッポロ 自治体と農業法人』(2009/7/2日経より抜粋)
サッポロビールは長野県池田町で農業生産法人を設立し、ワインの原料となる国産ブドウの栽培を始める。自前で原料を調達することで2013年までにワインの出荷量を09年の約2倍の2万ケース(720ミリリットル瓶12本換算)にまで引き上げる計画。ビール事業は低迷しており、市場が伸びている国産ワイン強化で収益の下支えにつなげる。
農業生産法人を設立するのはサッポロの子会社でワイン事業を手掛けるサッポロワイン(東京・渋谷)。長野県池田町と共同で1日付で「サッポロ安曇野池田ヴィンヤード」(長野県池田町)を設立した。資本金2000万円のうち90%をサッポロワインが出資、残り10%を池田町が受け持つ。自治体と共同で農業生産法人を設立するのはサッポロが初めて。
【後日記】『企業の農業参入加速』(2009/7/18日経より抜粋)
イオンは企業が自治体から農地を借りる「農地リース方式」を使い、茨城県牛久市の2.6ヘクタールの土地で小松菜や水菜、キャベツなどを9月から生産する。参入のための新会社を10日付で設立した。生産した野菜は青果市場を通さず自社の物流網活用などでコストを削減し、店頭価格を抑える。初年度は約300トンを収穫し、茨城県や千葉県などの「ジャスコ」15点でPBとして販売する。
3年後には牛久市の農地を15ヘクタールに広げ、収穫量も1500~2000トンに増やす。今後は北海道から九州まで同規模の農地を広げてPB野菜を販売し、3年後にPB野菜の売上高は年間数十億円になる見通し。
イオンと並ぶ二大小売りのセブン&アイは、農家や農協との共同出資で千葉県に農業生産法人を設立する形で2008年に参入した。農協や農家と連携しながら、今後2年以内に全国10カ所に同様の農業法人をつくる。
先行参入した食品関連大手も事業拡大に動いている。居酒屋のワタミは生産した野菜を自社の約600店でサラダなどに使用しており、13年までに農場の規模を現在の約480ヘクタールから約600ヘクタールに広げる。
政府は特に00年以降、企業の農業参入を後押しする制度を整備し、05年からは農地リース方式が全国で認められた。同方式で農地を借りられるのは市町村の指定した場所に限られ、耕作放棄地も多かったが、今年6月に成立した改正農地法が年内にも施行されれば賃借が大幅に自由になる。同時に、原則10%だった農業生産法人への企業の出資制限も緩和される。
★企業の農業参入・・・参入する手法は2つに大別され、農地取得が可能な農業生産法人に企業が出資する方法と、企業が市町村から農地をリースする方式で借りて農作物を生産する方法がある。現在、参入した企業はリース方式だけでも約350社に上る。
食料自給率向上などを目的に改正農地法が6月に国会で成立。10%だった農業生産法人への出資上限を企業の技術や販売網を活用する場合は50%未満に上げた。企業が借りられる農地は市町村が指定した耕作放棄地の多い地域などに限られていたが、大幅に規制緩和し、借用期間も最長20年から同50年に延ばした。
【後日記】『日米FTAは農業壊す JA全中など反発』(2009/8/8日経より転載)
全国農業協同組合中央会(JA全中)と全国農業者農政運動組織連盟は7日、民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)に掲げる日米自由貿易協定(FTA)締結への反対集会を都内で開いた。全国から約500人の農業者らが参加。「日本の農業を崩壊に導くもので、認めることはできない」とした決議を採択した。
民主党の管直人代表代行は7日の記者会見で、衆院選マニフェスト(政権公約)に明記した日米自由貿易協定(FTA)を巡る記述について、「締結する」から「交渉を促進する」と修正する方針を明らかにした。
表現を弱めることで、日米FTA構想に猛反発する農業団体などに配慮した形だ。
【後日記】『住友化学が農業参入』(2009/9/15日経より抜粋)
住友化学は農業事業に参入する。5年間で全国30~40カ所に農場を展開し、果物や野菜を百貨店など大手小売りに直接販売する。2015年度に50億円の売上高を目指す。住友化学は農薬・肥料の国内最大手で、農産物の生産・販売まで一貫して手がけ、相乗効果を狙う。農業の規制緩和が進む中、流通大手などに続き、製造業にも新規参入の動きが本格化してきた。
★農業の規制緩和・・・国は1990年代以降、段階的に農業の規制を緩和し、企業が参入しやすくしてきた。現在、企業の農業参入には農地を取得できる「農業生産法人」を設立する手法と、農地を借りて一般企業として参入する手法の2種類がある。農地を借りる手法を採る企業が多い。
改正農地法が年内に施行される見通しで、リースの地域制限が原則撤廃。農地の賃借が自由になることで企業の参入が加速するとみられる。賃借期間も20年から50年に延長する。農地そのものを取得できる「農業生産法人」への出資上限も10%以下から50%未満に引き上げる。
<農業の規制緩和の推移>
93年:農業生産法人へ企業(有限会社など)の出資が可能に
00年:農業生産法人へ株式会社の出資が可能に
03年:特区でのみ農地のリース方式で企業の参入が可能に
05年:特区方式が全国に拡大。市町村が認める地域で企業参入が可能に
09年(予):農地リースの地域制限を原則撤廃。期間も延長。生産法人への出資制限も引き上げ
【後日記】『減る農地 保全で歯止め』(2009/9/29日経より転載)
世田谷区は23区で初めて農業利用を目的に区が農地を取得する枠組みをつくった。公園にするため農地を取得した例はあるが、今後は基本的に農地のまま活用する。区内の農地は約120ヘクタール。過去10年で約40ヘクタール減っており、買い取りで農地減少に歯止めをかけたい考え。
1ヘクタール以上で、農家が土地を手放す際、都市計画公園・緑地に指定し、宅地並み価格で買い取る。取得資金は国の補助金と東京都の都市計画交付金を活用する。
農地保全重点地区に指定した桜上水地区など区内7地区で買い取りを計画しており、第1弾として瀬田農業公園周辺の農地を取得する。農協や農業大学などと連携し、子どもの農業教育、区民への農地貸し出し、農産物の試験栽培などに活用することを検討中だ。
区は現在、区立公園内に住民が参加できる水田や畑を設けたり、23カ所で区民農園を運営したりしている。
農家から農地を借り住民に貸し出す区民農園は練馬区や杉並区でも人気だ。農地面積が約280ヘクタールと23区内で最も広い練馬区では農産物の地産地消が進めば、商店街振興や輸送に伴う二酸化炭素(CO2)排出量の削減などにもつながると判断。区立農業公園や練馬大根の収穫大会など区民が農業とふれあう場を多く用意している。
ただ練馬区の農地もここ10年で約25%減少。区は現行制度下での都市部の農地保全には限界があるとして、保全の制度設計を国などに求めてきたが、国の動きは鈍い。
このため志村豊志郎区長が旗振り役となり、都市農地保全推進自治体協議会を昨年発足させた。都内の38区市町が参加しており、連携して農地の相続税の猶予制度の拡充など具体的な提案をしていく方針だ。
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