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2009年9月13日 (日)

【日本の議論】危機に直面する「出産」「子育て」 民主党政権で何が変わる? 本当に必要なのは…

 明治大学の安蔵(あんぞう)伸治教授(人口学)は、「子育ての経済的負担を軽減」することで「安心して出産し、子供が育てられる社会を作る」(マニフェストより)とする民主党の主張に懐疑的な見方を示している。

 それは「なぜ日本で少子化が進んでいるか」という問題につながるという。

 「そもそも、結婚した女性は、以前と変わらず子供を産んでいる」と安蔵教授。日本の特殊合計出生率は1・37にとどまっているが、これは、未婚・既婚を問わない出産可能な年齢の女性が、生涯で何人の子供を産むか、という数値だ。安蔵教授は「1950年代末ごろに『子供の数は1家庭に2人』という『2子規範』ができて以降現在にいたるまで、結婚している女性に限れば、出生率はそれほど大きな変化は見せていない」と指摘する。

 実は「結婚さえしてしまえば、高度経済成長期とほぼ変わらない出生率が保たれている」という現状。このことは、いくら「子育て」の援助をしたところで、少子化を食い止めることはできないことを意味する一方、少子化・子育て問題の“本丸”は、「未婚者に、どうやって結婚してもらうか」にあることも示している。

 では、なぜ現代社会では、未婚化・晩婚化が進んでいるのか。

 「背景にあるのは、現代の女性の考え方や生き方」と安蔵教授はいう。

 女性の高学歴化に伴う社会進出や経済的自立、結婚後の就業継続希望…。こうした価値観や行動を受け入れ、それに適応した社会システムや家族の在り方を容認するのか、伝統的な価値観に重きを置き、これまでの女性の生き方にこそ幸福があると考えるのか。

 安蔵教授は「少子化や子育てを考えるということは、国家や社会の在り方を考えていくことに他ならない」と強調する。

 以上、2009.9.13 18:00産経ニュースから抜粋しました。

 この点につきまして、箸にも棒にも掛からないとある掲示板で、思いもよらず感心させられた意見があったことを思い出しました。

 例によって作者に無断で転載します。

少子化が進んだ背景には、社会構造の変化がもっとも深く関係していると思います。昔に比べて女性の社会進出が進み、共働きが当たり前になったことで、子供を育てる余裕がなくなっているのでしょう。

昔は「女は家庭に入るもの」という風潮が一般的で、結婚したら子供を産み、育て、家事一般をとりしきる事が当たり前でした。従って、保育所などを利用する世帯の割合は現在に比べてとても少なく、そういう意味では子供を育てやすい環境だったとも言えるかも知れません。男性の給与が女性に比べて優遇されていたのも、このような風潮が背景にあったと考えれば当然のことのように思えます。

女性の社会進出が進むと、こういう図式は成り立たなくなります。子供を産んだとしても、両親共に育児をする時間がないんですね。だから保育所等の施設を利用する人の割合が激増し、利用したくてもできない人が多数出てくることになります。子供を産んでも育てる環境がなくなりつつあるというのは、こういう変化も背景にあるのではないでしょうか。

また、昔は男性のみの職場であったところでも女性が活躍するようになった反面、職場の数に対して職を求める人の数が増加し、企業の効率化が進んだことともあいまって失業率の増加という大きな社会問題も発生しています。少子化問題とはこういった社会の変化が原因であり、子供手当てなどで解決できるような単純な問題ではないと思います。

最近、専業主婦を見下すような偏った見方をする女性もいると聞きます。しかし、上記のような流れから考えると、むしろ専業主婦のほうが社会に貢献しているとも言えます。少子化問題を考える場合、その背景にあるものを見ずして根本的な解決はありえないのではないでしょうか。

少子化問題は、子供手当てや高校無償化など、お金で解決できるような簡単な問題ではなく、女性の社会進出という大きな変化が背景にあることを政治家は認識すべきです。

 ・・・と、いうカキコミでした。このような考察ができる人は頭の良い人です。バカの一つ覚えのように口を開けば、特殊合計出生率うんぬんかんぬんしか言えない人とは思考の深さが違うように思います。(ただし、「女性の社会進出」という同じ要因を背景に挙げていますが、先の教授とは違って、結婚しても子供を産まない女性が増えた、という見方をされているようです。)

 【後日記】『結婚促進こそ少子化対策の要』(2009/11/27日経より)

 この日の『経済教室』は宇南山卓・神戸大学准教授が執筆でした。以下に要約します。

 少子化の進行を要因分解すると、結婚の減少が最大の原因である。日本では出産は結婚が前提で、婚外子の割合が極めて低く、出生率の低下は、婚姻率の低下と既婚女性の出生率に分解できる。国立社会保障・人口問題研究所の計算によれば、少子化が進行した70年から05年まで出生率は0.87ポイント低下した。それに対し、結婚した人口の割合である「有配偶率」の低下で1.10ポイント分の低下を説明できる。一方、結婚した女性の出生率である「有配偶出生率」は、むしろ出生率を0.22ポイント引き上げ(四捨五入の関係で合計は一致せず)、少子化の原因ではなかった

 この結婚の減少は、結婚のタイミングの変化である「晩婚化」ではなく、「非婚化」によるものである。50歳時点での未婚率である「生涯未婚率」は、60年ごろまで男女とも2%未満だったが、05年には女性で7.2%、男性では15.6%まで上昇した。現在の若年層の未婚率はさらに高く、生涯未婚率は今後も高まることが予想され、非婚化は構造的な問題となっている。

 つまり少子化を食い止めるには結婚を促進する必要があり、それには非婚化の原因解明が不可欠である。だがこれまでの経済学では、結婚には、家事と仕事の分業、耐久財の共有、子どもが持てるなどのメリットが存在し、結婚した夫婦の合計の厚生水準はそれぞれが独身にとどまった場合の合計より必ず高いと考えてきた。そのため、一生結婚をしないという選択を合理的には説明できなかった。

 これに対し、最近の研究で、家族を「個人」の集合ととらえ家計内の支出における意思決定権限に注目した、コレクティブ(Collective)モデルが発展しつつある。その理論によれば、夫婦間の所得差や年齢差などに応じて、支出の意思決定権が決まり、夫婦の所得は必ずしも平等には分配されない。結婚・出産後の離職によって意思決定権が弱くなる場合、配偶者の所得が十分高くないと結婚しても「個人」の厚生水準を高めるとは限らない。つまり独身を選択する可能性が説明できる。

 このモデルに基づけば、非婚化の原因は過去30年の女性の賃金の変化である。家計内分配の重要な決定要因のひとつが夫婦それぞれの労働市場での賃金水準であることがこれまでの実証結果で分かっている。つまり女性の賃金の変化によって、結婚の意思決定は影響を受けるのである。

 フルタイム労働者では男女の賃金差は解消されつつあり、女性が独身にとどまった場合の厚生水準は飛躍的に上昇している。一方、既婚女性の重要な就業形態であるパートタイム労働者の賃金水準は相対的に低いままで、妻の意思決定権は依然弱く、既婚女性の厚生水準は改善していない。結局現在では、独身にとどまることは必ずしも不利ではなく、非婚化を引き起こしている。

 これまでの子育て支援や現政権で検討されている「子ども手当」は、女性の賃金上昇に相当する金額以上の給付が必要で、政策コストは大きい。

 既婚女性の賃金を上げるには、パートタイム労働者の賃金上昇を目指すより、結婚・出産後も就業を続けやすい環境を整えフルタイム労働者とする方が現実的で効果も高い。またこれまでの研究で、出産後の就業継続の支援には保育所整備が有効であることが知られている。つまり保育所の整備こそ最大の結婚促進策で少子化解消策といえる。

 保育所の整備は、既に「子育て支援」の政策としてではあるが、重点課題として進められてきた。しかし結婚促進策の観点では、以下の点の改善が必要である。整備すべき地域の選択だ。これまでは待機児童数を保育所の整備の基準としてきた。だがこの基準では、非婚化のために児童数の少ない地域での保育所不足が過少に見積もられる。

 筆者は、保育所の整備状況を示す尺度として、25~34歳の女性の人口と保育所の定員との比である「潜在的定員率」を提唱したい。05年時点での潜在的定員率は、全国平均が23.1%なのに対し、大都市部では16.2%である。未婚率が低く女性の就業率が高いことで知られる山形、富山、石川、福井、鳥取、島根の日本海側6県では42.5%で、大都市部との格差は顕著である。

 結婚促進策としては、大都市部での保育所整備を現在の全国平均と同等にするだけでも大きな効果が期待できる。大都市部では25~34歳女性の未婚率が全国平均より3.5ポイント高い。保育所整備でこれを全国平均と同等にできれば、婚姻数は毎年14万件増える。これは05年の全国婚姻数71万件の2割に相当する。

 さらに、既婚女性の出生行動が過去と大きく変化しなければ出生数も20%上昇し、出生率は現在の1.3台半ばから1.62に回復する。これは、社会保障・人口問題研究所の将来推計人口における楽観的な予測である「高位推計」よりも高い水準だ。自民党の提示した移民受け入れ1000万人計画と同等の大きな効果であり、公的年金の持続可能性や労働力人口の減少の問題を大幅に改善できる。

 一方、この政策のコストとは、7%低い大都市部での潜在的定員率を全国平均と同等にするための費用である。これは、保育所の定員を28万人増やすことに相当する。東京都内の保育所定員1人あたりの運営コストが年間200万円と試算されており、毎年5600億円の追加経費が必要となる。現在の保育関係予算全体(4000億円)と比べれば高い水準だが、5兆円以上とされる「子ども手当」の約10分の1ですむ。しかも、保育所の整備による少子化対策は、現金を支給する政策と異なり、女性の労働力化と少子化の解消の両立を可能とする望ましい政策である。

 ・・・と、原因と対策を述べておられます。原因については、なるほどその通りでしょう。対策についてはもっと低コストでできる効果的なものがあります。正規の雇用コストを下げて、その分非正規の従業員に補てんしてやればよいのです。そうすれば人は今までの経済学のモデルにしたがった行動をとるでしょう。

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