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2009年8月 1日 (土)

今年の経済財政白書の読み方

 昨日の日経『大機小機』を転載します。

 経済財政白書が発表された。基本的には時代の要請に応えた力作だと思う。特に評価すべき点は、世論に迎合しない姿勢を貫いていることだ。例えば次のような点だ。

 第1は、外需か内需かという議論である。2008年度後半以降、外需の落ち込みによって景気が大きく停滞したため、世の中では「外需主導から内需主導への転換が必要だ」と指摘する人が多い。しかし白書は、今後の新興国における需要拡大などを考えれば、外需は依然として重要な成長のエンジンであり、「外需と内需の双発のエンジン」で回復を目指すべきだという。

 第2は、非正規雇用と格差の議論だ。世の中では「規制緩和の行き過ぎが非正規雇用を増やし、格差社会をもたらした」とし、「非正規としての雇用を規制すればよいではないか」と簡単に言う人が多い。しかし白書では、「非正規雇用が増えたのはここ数年の現象ではない」「非正規雇用が多様な就労ニーズの受け皿として機能した面がある」「厳しい雇用保護規制は非正規雇用比率を高め、平均失業期間を長期化させる効果がある」「失業の増大こそが格差拡大の原因であり、景気回復が最大の格差対策である」といった議論を展開している。

 第3は、金融危機への対応をめぐる議論である。選挙を控えて、各党の政策はどうしても歳出拡大型になりやすい。こうしたなかで白書は、出口をどうするかも重要だと指摘し、「景気回復後に財政再建にどう取り組むか、十分な検討が必要だ」と説明する。

 また、短期的な危機対応だけでなく、今のうちから危機後の成長をみすえた対応が必要であると説き、フィンランドやスウェーデン、韓国などの例を引きながら「危機後にも生産性を高め、競争力を強化するためには、研究開発や人的資本への投資を怠らないことが基本だ」と論じる。

 いずれも正統的分析に基づく適切な指摘である。ホットな経済問題が出現すると、経済論議もまたホットになりがちだが、白書はクールな姿勢を貫いていて好感が持てる。

 こうして見てくると、今年の白書は、来るべき政権に対して、経済政策のあるべき方向を伝えようとしているようにも思える。選挙の結果、どの政党が政権を担うにせよ、経済政策運営の責任を担うこととなる人々は、この白書を熟読玩味し、経済政策の運営に誤りのないようにしてほしい。

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