ASEAN 成長に明暗
タイは2008年十-十二月期の国内総生産(GDP)の伸び率が年率換算でマイナス22.3%と1998年を上回る落ち込みだ。政治混乱に加えて輸出額の減少が響いた。08年通年ではプラスを維持したが「09年は通貨危機時に匹敵するマイナス成長となる可能性がある」(タイ工業連盟のサンティ会長)。
同国は通貨危機後、バーツ安をテコに自動車や家電産業などが国内販売から輸出にシフトし急回復を遂げた。その結果、輸出のGDPに占める割合は97年の48%から08年は76%に達した。今回の金融危機では輸出依存型経済のもろさが露呈した形だ。
シンガポール政府は09年の経済成長率見通しをマイナス5-マイナス2%と予測し、減少幅が域内最大になりそう。前回の危機では域内輸出の落ち込みを先進国向けが補い、周辺国よりも被害が軽微だった。同国は輸出額がGDPの200%を超え、今回は主要先進国の経済不振で輸出額は二月まで十カ月連続で前年割れが続く。マレーシアも輸出額は一月に同18%減で、政府は今年の成長率見通しを最悪マイナス1%と予測する。
一方、インドネシアは世界四位の約二億三千万人の人口を抱え、GDP比約70%を占める内需が金融危機の影響を和らげている。七月の大統領選などを控え「選挙特需」も見込まれ、政府は今年の成長率目標を4.5%と高めに置く。フィリピンも域内二位の約九千万人の人口を誇り、内需がGDP比八割超。消費拡大で今年の成長率は最大4.4%を見込む。
約十年前の通貨危機ではタイバーツが対ドルで急落。それがインドネシアやマレーシアの通貨に飛び火し、現地企業や金融機関が相次ぎ破綻した。今回は欧米の景気後退がアジアに波及した形で、各国は輸出で現状を打開するのは難しい情勢だ。公共投資による内需拡大など自助努力が必要となりそうだ。
以上、3/24日経より転載。
★アジア通貨危機・・・1997年七月二日、タイの通貨バーツの暴落に始まるアジア通貨危機は、瞬く間にフィリピンやマレーシア、インドネシア、韓国へと燃え広がった。動揺は翌年、ロシアやブラジルにも飛び火し国際経済に大混乱を引き起こした。
高成長を続けてきたアジア新興国群。一部では不動産バブルなど変調が見え始めていた各国通貨が実態より過大評価されているとみた投機筋は97年春から売り攻勢を強化。当局は買い支えで対抗したが外貨準備が底をついた。
通貨安で対外債務は急膨張し、外資は一斉に投融資を引き揚げた。国際通貨基金(IMF)がタイ、インドネシア、韓国を支援したが、見返りに緊縮財政や構造改革を要求したことで一段と景気が冷え込み、三カ国の実質国内総生産は98年に7-13%も減った。韓国は失業者であふれ、暴動が広がったインドネシアではスハルト政権が倒れた。
それでも製造技術などの底力がアジアに残っていたのは幸いだった。対米輸出が持ち直すと、アジア経済は99年からV字型回復を遂げた。
その後の10年でアジアは体質改善が進んだ。IMF管理下にあった三カ国の外貨準備高は2007年末で計四千億ドルと97年末の六倍超に。緊急時に域内で外貨を融通しあう仕組みも整えた。97年危機で四-八割に達したアジア通貨の下落率は足元の金融危機では一-三割にとどまる。
半面、今回の金融危機は米国が震源で、以前のように対米輸出には期待できない。中・東欧などバブルへの免疫がなかった地域がかつてのアジアと似た構図で危機に見舞われている。
グローバル化の進展で世界経済の”火薬庫”はむしろ増えている。(2009/1/1の日経より転載)
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