企業の採用担当者向け情報サイト「HC-Lab.」の前岡巧編集長は「団塊の世代の大量退職により企業は人材を求めており、バブル崩壊後の就職氷河期のように新卒採用を極端に絞る企業は少ないだろう。昨年に比べて採用数は減るだろうが、氷河期という言葉には違和感を覚える」と分析する。
リクルートワークス研究所の調べによると、十二月時点で来年の新卒採用見通しを昨年比で「減る」と回答している企業は15.7%で、50.6%の企業は「変わらない」としている。
だが「就職氷河期の再来か」といった報道で不安をかきたてられ、企業の採用活動が本格化する前から悲観的になっている学生が多いという。
ディスコ(東京・文京)が十一月に行った調査では10年度卒の学生のうち、就職戦線の予想を「非常に厳しい」と感じている人は42.6%。56.2%の「やや厳しい」と合わせ98.8%の学生が就職活動に不安を感じている。
以上、日経より転載。
【参考】『景気急減速で高まる雇用不安 対策の重点、「非正規に」』
去年12/22の日経「経済教室」はリクルートワークス研究所所長の大久保幸夫氏が執筆でした。以下、転載。
来年春に就職予定の大学生三百二人の内定取り消しが発生しているとの発表が、十一月末に厚生労働省から行われた。だが、これは過去の調査方法とは異なり、一概に多いとはいい切れない。いくつかの大学就職部へのヒアリングでも、内定取り消しが次々に発生して対応に苦慮している実態は出てこない。
そもそも三百二人という人数は就職希望の大学生約三十九万人に対して一千人に一人の割合で、大量発生とはいえない。事実よりも誇大にとらえられているのではないだろうか。十月一日時点での就職内定率は0.7%改善したという十二月十六日の厚労省発表を見ても、今大卒就職の危機が訪れているとはいいがたいだろう。
これから始まる2010年卒の大卒新卒採用についても同様のことがいえる。「ワークス大卒者採用見通し調査」によると、前年に比べ減るとした企業(15.7%)が増えるとした企業(8.3%)を上回ったが、同時に「変わらない」とした企業が約半数(50.6%)あった。また、減るとした企業に尋ねても「バブル崩壊のときのように数分の一とかゼロ採用といった極端な減らし方はしない」という声が目立った。
これはバブル崩壊時の新卒採用抑制で、その後の組織構造に空白が生じてしまった過去の苦い経験から、多くの企業が「新卒採用は景況に関係なく一定数を採り続ける」とした意志を持っているためだろう。実は新卒採用はかなり底堅く、就職氷河期の再来と過剰に不安感を持つ必要はないように思われる。
一方、中途採用の雇用環境はかなり厳しくなりそうである。「ワークス中途採用見通し調査」によると、09年度の正社員中途採用予定数は前年比マイナス10.4%と見込まれ、バブル崩壊直後の1993年(マイナス8.8%)や円高不況期の86年(マイナス10.1%)を上回る落ち込み幅になりそうだ。さらに景況が悪化した場合にはマイナス17.8%まで下ぶれする恐れがあるが、これは第一次石油ショック時の74年(マイナス18.9%)に迫る水準である。特に機械系製造業や保険業などの落ち込みが顕著で、飲食業や医療・福祉分野の一部でいまだ堅調な動きがあるものの、見通しは相当に厳しい。
さらに問題なのは非正規雇用である。総務省の「労働力調査」によるとバブル崩壊時には約20%だった雇用者に占める非正規雇用比率は、現在では34.5%にまで上昇している。そのため、これまでの景気後退期よりは不況が失業に直結する危険性が高い。とりわけ製造業で働く派遣労働者や期間工については失職して次の職が見つからない人々が多くなりそうだ。
労働者派遣法改正で、2007年三月に製造業への派遣の雇用期間が一年から三年に延長されたが、これに基づく派遣労働者の大多数がいっせいに雇用期限を迎えるといういわゆる「2009年問題」が表面化する恐れもある。好況期に決めた待遇改善のためのルールが、不況期に失業という意図していなかった結果を生み出してしまう皮肉な結果になりかねない。また三十日以内の派遣を禁止する派遣法改正も予定されているが、これも実施時期によっては短期や日雇いで働く人々の雇用を奪い、失業者を増やす危険性を否定できない。
雇用は景気に敏感に反応し、雇用危機は景気後退のたびに定期的に訪れる。重要なことはその「下り坂」をいかにうまく制御して進むかである。企業部門、政府部門、そして個人にも、事実を正しく認識し、過去の経験に学ぶことが求められている。
幸い企業には新卒採用について採用数の極端な増減は望ましくないとする経験知が蓄積されているようだが、ポイントはほかにもいくつかある。まず企業の社会的責任(CSR)に関する議論の積み上げを踏まえ、(広義の)従業員や地域社会と向き合った人員計画を立てることだ。派遣契約は単なるビジネス上の契約という範囲を超え、使用者側にも一定の責任を期待するように変化している。「社会が何を期待しているのか」により敏感になる必要がある。
また90年代には大規模なリストラ計画の発表で当該企業の株価が上がる傾向があったが、市場環境の変化で現在はそう言い切れなくなっている。さらにバブル崩壊時には、人材育成投資は企業全体で一千億円圧縮されたが、人材育成を怠ることは、景気回復以降にも悪影響を及ぼすことを実感したはずである。そうした経験を踏まえた経営のかじ取りが求められよう。
政府は、雇用政策を立案する際、サービス業より製造業、大企業より中小企業、都市部より地方部のほうがより環境が厳しいことを十分に認識する必要がある。既に雇用対策が二度にわたり発表されたが、非正規雇用を中心とした失業給付の対象拡大や延長、製造業や中小企業などの解雇を抑制する雇用調整助成金の拡大、非正規離職者向けの住宅の支援、中小企業の倒産による失業者増を懸念した融資政策などは、現実の課題を踏まえた適切なものだろう。
一方で、もっとも有力な方法のひとつである職業訓練の対応は遅れている。公的職業訓練は、就職困難者の能力を高めつつ、高い確率で就職実現に結びつける方法として極めて有力である。例えば国の施設内訓練の場合、一人当たり八十万円の経費で六カ月間の訓練を提供し、82%の確率で就業にこぎつけている。職業訓練にはまた、能力によるミスマッチを解消して、企業の求人意欲を着実にいかす効果もある。そうした雇用の重点施策が求められるのに、国の職業訓練は、雇用能力開発機構の解体問題で遅れ、都道府県の職業訓練は、財政難による訓練施設の縮小などにより弱体化している。
他方、公的雇用に依存することは疑問である。緊急避難とはいえ、必要のない雇用を無理に作り出して失業者を雇用することは、意欲を喪失した労働者を作り出すという副作用がある。戦後の失業対策事業が長期にわたってやめられなくなった苦い経験を忘れてはならない。あくまでも必要な公共事業の前倒しによる雇用創出にとどめるべきであろう。過去の雇用対策では予算規模の大きさばかりが論じられ、その効果に十分な関心が向けられない傾向があったが、より実際効果を意識した対策を期待したい。
働く側にとっても、安易に転職をしない姿勢が求められる。今後早期退職優遇制度などで退職金を上乗せして退職希望者を募る企業が増えてくるだろう。そのときに、次の就業先を決めずに手を挙げることは危険である。我々の調査では転職時に次の企業に内定してから離職する人は18.5%にすぎない。改善されつつあるとはいえ、ミドル以上の年齢層の転職市場は若者と比べて厳しい。前の不況期にも早期退職に応じたホワイトカラーから多くの長期失業者が生まれたことを思い出さなければならない。また学生の就職活動では、新しい産業分野やベンチャー企業に目を向けることを推奨したい。
石油ショック時には、新興のフードサービスやチェーンストアが優秀な人材を集め、大きな産業へと成長していった。バブル崩壊時にはITビジネスが優秀な人材を集めた。不況期に優秀な人材を集め、その後の好況期に大きく成長する企業を先物買いするのである。政府にはあわせて、景気低迷期であるからこそ、次の時代に日本の有力産業として成長する可能性がある分野の支援を期待したい。
日本は不況を切り抜けるノウハウを持っている。今回の雇用環境悪化も、経験から得たノウハウを最大限発揮すれば乗り越えられるはずだ。
【参考】『人材、非製造業へシフト 受け皿確保、内需カギ』(日経2008/12/12より転載)
北関東を地盤とするホームセンター二位のカインズ(群馬県高崎市)は2009年春の新卒採用の期間を約二カ月延長した。例年、九月末に打ち切るが、今年は十二月上旬まで延長。大企業が中途採用を抑制し一部では内定取り消しもある今が「優秀な人材を確保するチャンス」とみる。09年春の採用数は最大で前年比三割増の二百五十人になる見込みだ。
日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の渡辺正夫社長は「来春は内定辞退者がほとんどいない」と驚く。例年は二-三割が他社に流れていた。
神奈川県が地盤の家電量販店ノジマは10年春の新卒採用を五割増の三百人にする。「過去の就職氷河期には有名私立大の学生も応募してきた」(人事担当者)。今回の後退局面も流通業にとってはチャンスだ。(つったって、今は昔と違って全入時代なんでしょ?違うの?by けんchang)
リンガーハットの米浜和英会長兼社長は「大手電機メーカーが長崎県内の工場売却を決めたあと、県内のチャンポン店などで必要な人員を確保できるようになった」と打ち明ける。静岡県小山町の食材加工工場でも「秋以降は人が採れるようになった」(米浜氏)。静岡県東部は自動車や電機関連の工場が多い。輸出型から内需型への雇用シフトが始まった。
過去二度の石油危機では「店舗網の拡大を進めていたスーパーなどが(製造業からあふれた雇用の)受け皿になった」(連合総研の成川秀明上席研究員)。八兆円市場のコンビニエンスストア、六兆円市場の家電量販店など新たな受け皿も育った。慢性的な人手不足に悩むこれらの内需関連企業が雇用を受け止めれば、景気後退の傷みはかなり緩和される。地方も受け皿づくりを急ぐ。
マツダが本社工場(広島市)と防府工場(山口県防府市)の二工場で計千三百人の派遣社員削減を進めている広島県。マツダ関連企業五十社でも四百人の削減計画が明らかになった。
これを受け広島労働局は十一月六日に雇用対策本部を設置。県内で採用意欲のある企業を探し、造船関連や物流業界など約八十社の四百四十人分の求人を掘り起こした。だが「県内の離職者は千五百人を越える。十分な数を確保できるわけではない」(落合淳一局長)。過去最速で進む今回の調整局面では、受け皿づくりが間に合わない恐れがある。
「今の人員削減のスピードは異常。1980年代の鉄冷えの時代は製鉄会社と組合がじっくり交渉し、転籍などの手段を考えた。今は製造派遣の解禁などで構造が一変し経営判断に(行政の対応が)追いつけない」。87年から五期二十年にわたり北九州市長を務めた末吉興一内閣官房参与は語る。
世界景気の後退が長引けは内需の受け皿からも雇用があふれる。外需回復を待つだけでなく内需を広げる努力がいる。
09年の春季労使交渉で月額四千五百円の賃金改善を要求する方針を決めた電機連合。「雇用創出のため賃上げによる内需喚起が必要」と主張するが、雇用すら危うい時期だけに経営側からは「KY(空気が読めない)要求」の声も上がる。
新しい技術やサービスで雇用を生むのが企業本来の姿。「雇用を守る」だけでなく「雇用をつくる」視点がないと、この危機は乗り切れない。
【後日記】『来春新卒採用 大手銀、高水準続く』(2/17日経より転載)
大手銀行は2010年春の新卒採用で一定の積極姿勢を維持する。みずほフィナンシャルグループや三井住友銀行の採用予定数は過去最高水準となる09年春見込みを下回るものの、なお千人以上を採用する方向。りそなホールディングスは今春を上回る採用をめざす。金融危機下でも新卒の減少を抑え、年次構成に将来ゆがみが生じないように配慮する。
今春に過去数年と同水準の二千三百五十人を採用する予定のみずほは来春、千七百人程度を採用する計画を固めた。三井住友は今春の二千百人に対し来春は千百人を採用する計画。三菱東京UFJ銀行は今春予定の千五百人からどの程度減らすか検討中だが、総合職は水準をほぼ維持する構え。三大銀に比べて業績が堅調なりそなは今春予定の八百五十人から来春は九百人に増やす計画だ。
三大銀が採用をある程度減らす背景には、金融危機で業績が悪化しているだけでなく、数年間続けた空前の積極採用の反動もあるとみられる。入行から数年未満の若手行員が極端に多くなったため採用ペースを緩める狙いがありそうだが、それでも一定規模の採用は続ける。
【後日記】『来春の新卒採用 JR東海、最多1030人』(2/21日経より抜粋)
東海旅客鉄道(JR東海)は二十日、2010年春の新卒採用者数が過去最高の千三十人になると発表した。09年春も千二十五人の新卒採用を予定しており、二年連続で過去最高を更新する見込み。団塊世代の大量退職を補充するほか、2025年に開業を目指すリニア中央新幹線の建設に向けた人材確保が狙いだ。
【後日記】『流通・サービス大手35社 採用「増やす・横ばい」7割』(3/6日経より転載)
採用を増やすのは十一社。給食・カラオケ大手のシダックスは今春の4.3倍の二百二十人。パートの正社員登用が一巡するなか管理栄養士の資格を持つ正社員などを採用、老人ホームや公共施設が給食を外部委託する需要を取り込む。保育所大手のJPホールディングスは昨年まで予定採用数を確保できず保育所開設を抑制せざるを得なかったため、来春は最高の二百人を計画している。
横ばいは十三社。衣料店「ユニクロ」のファーストリテイリングは大型店を中心に積極出店するため、今春の二百八十六人と同水準を維持する。
十一社は採用を減らす。今春に百七十人が入社するスターバックスコーヒージャパンは、競争激化や客離れによる業績悪化を受けて採用を当面見送る。セブン-イレブン・ジャパンは10年二月期に最大規模の一千店を出店するが、景気悪化で社員の定着率が上がっているため半減させる。
この結果、三十五社合計の採用は約五千四百人と、今春より約六百人減る見通し。
厚生労働省の昨年十一月調査では、正社員が「不足」と答えた企業の割合から「過剰」と答えた割合を引いた過不足判断指数(DI)は製造業でプラス2。これに対し、「飲食店、宿泊業」プラス18、「サービス業」プラス16と、景気後退局面でも流通・サービスの現場では人手不足感が強い。
同じ内需型産業である電力や大手銀行が大量採用を維持するのと比べると規模は小さいが、確実に雇用の受け皿としての役割が高まっている。
【後日記】『JR東の設備投資 民営化後、最高に』(3/24日経より転載)
東日本旅客鉄道(JR東日本)は二十三日、2009年度の単体の設備投資額を08年度計画比で二百億円(約6%)増の三千六百億円にすると発表した。1987年の民営化後で最高となる。自動車や電機など各社が投資抑制に動くなかで内需型企業の投資意欲の底堅さを示した形だ。
投資額の約47%は、高架橋の耐震補強や自動列車停止装置(ATS)の整備、可動式のホーム柵の設置など安全関連投資が占める。また東京駅など主要駅の整備、東北新幹線の新型高速車両の導入、駅ホームの照明の省エネルギー化などにも積極投資する。
同社の設備投資額は06年度から三年連続で過去最高を更新していた。昨年春に策定した中期経営計画でも08-10年度の三年間に単体で総額一兆一千億円の設備投資をする方針を打ち出しており、景気が後退局面に転じても安全関連を中心とした高水準の投資額を継続する。
景気後退で鉄道利用も全国で減少傾向をたどっているが、JR東日本が地盤とする首都圏の利用は減少幅が比較的小幅にとどまっている。
【後日記】『JR東海内定者 過去最多1045人 来年4月入社予定』(10/1日経より転載)
東海旅客鉄道(JR東海)は30日、2010年4月入社予定の内定者数が過去最高の1045人になったと発表した。09年実績を24人上回る。25年の開業を目指すリニア中央新幹線の建設もにらみ、人員を拡充する。景気悪化で東海道新幹線の利用者は減少しているが、中長期的には需要が回復するとみている。
来春入社予定は総合職が98人、地域異動が原則ない準総合職が53人、列車運行の現場を担うプロフェッショナル職が894人。
JR東海では今年度に900人近くの社員が定年退職を迎える。新卒の大量採用は退職者の補充という面もある。リニアを円滑に開業できるよう若手技術者の育成も早めに進める。JR東海の新卒採用はバブル崩壊後、300人台まで急減した時期があったが、ここ数年は増加基調にある。
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