日銀は企業が短期的な資金の調達に使う有価証券であるCPを金融機関から時限的に買い取ることも決めた。金融危機に伴う信用収縮で資金繰りが苦しくなっている企業を支援するのが狙いだ。
株安で損失を抱えた金融機関が購入を抑えたことで、信用力の高い大企業もCPによる資金調達が難しくなっている。日銀が金融機関からCPを買い取れば、金融機関が別のCPを買う余裕ができる。CP買い取りを始める時期や規模は今後詰める。証券化商品や株式などCP以外の金融資産を対象とした新しい金融支援策の導入も検討する。
政府の緊急対策の一環でCP買い取りを決めた日本政策投資銀行への支援も実施する。日銀はCPを担保に一定期間資金を供給する公開市場操作(オペ)の対象金融機関に政投銀を加えて、政投銀がCPを買い取りやすくする。
日経より。
★コマーシャルペーパー(CP)・・・企業が運転資金などを調達するために、主に金融機関向けに発行する約束手形。証券保管振替機構によると、企業などが発行したCPの残高は約18兆円。今年8月までは22兆円あったが、金融危機のあおりでCPの発行金利が上昇。発行を見送る企業が相次ぎ、10月以降残高が急減した。
日銀は企業の資金繰りを支援するため、CPを担保とした金融調節の額や頻度を増やしている。2003年7月-06年3月には売掛債権などを裏付けとする資産担保CP(ABCP)の買い取りを実施したことがある。
【後日記】『日銀、CP買い取り2兆円』(2009/1/16の日経より抜粋)
日銀は公開市場操作(オペレーション)の一環として銀行を通じてCPを買い入れているが、金融機関に買い戻してもらう条件が付いている。新たに導入するCP買い取りは日銀が償還まで保有する。買い取り額が二兆円なら、十四兆円規模のCP市場の14%分の資金調達を日銀が支援することになる。日本政策投資銀行が設ける二兆円の買い取り枠と合わせると約30%で、発行環境が大きく改善する。
ただCP発行企業が倒産すれば日銀も損失を被るため、対象は格付けの高い企業に限る方針だ。
日銀はさらに中小企業の売掛債権などを担保とした資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)や、社債についても買い取りを検討中。ただ社債は償還までの期間が長いぶん、日銀が損失を被るリスクが高く、買い取りに慎重な意見もある。
【後日記】『一般企業に公的資金』(2009/1/24日経より抜粋)
政府は日本政策投資銀行を通じ、企業に資金を資本注入する。元手となる資金は政府系金融機関の日本政策金融公庫(日本公庫)が政府から借り入れたり、政府保証を受けて市場から調達したりする。これまで銀行や信用金庫などに公的資金を資本注入する仕組みはあったが、一般企業にはなかった。
政府は企業の資金繰り対策のため、08年度第二次補正予算案に政投銀を通じた一兆円の低利融資枠を盛り込んだ。新制度はこの融資枠を企業への資本支援にも使う。経済産業省から産業活力再生特別措置法(産業再生法)に基づく事業計画の認定を受けた企業を注入対象とする。
日本の公的資金による資本注入(金融機関への注入実績)
早期健全化法・・・1999年3月-2002年3月・・・86053億円・・・32行
金融機能安定化法・・・1988年3月・・・18156億円・・・21行
預金保険方(危機対応)・・・2003年6月・・・19600億円・・・1行
組織再編成促進特措法・・・2003年9月・・・60億円・・・1行
金融機能強化法(旧法)・・・2006年11月-12月・・・405億円・・・2行
★産業再生法・・・企業の生産性向上や財務体質強化に向けて、政府が支援することなどを盛り込んだ法律。1999年に制定された。企業が「事業再構築」や「経営資源再活用」などの類型にあわせて計画を作成し、主務大臣に提出、認定を受ける。認定には総資産利益率(ROA)や自己資本利益率(ROE)の向上など基本的な基準を満たす必要がある。
認定企業は税制や会社法などについて、政府の支援が受けられるというメリットがある。2003年の改正から昨年九月までの間に、277件が認定を受けている。
産業再生法の認定企業に対する主な支援内容
●資産に評価損が発生したときに損金算入できる
●事業革新設備の特別償却
●会社設立や増資の際の登録免許税の軽減(増資額100億円あたり4500万円の費用削減)
●事業譲渡に伴って不動産を取得・譲渡する際に不動産取得税の6分の1相当を軽減
●株主総会の特別決議がなくても、取締役会の決議で株式を併合できる
★公的資金による資本注入・・・国が金融機関の株式を買うなどの方法で資本を入れること。普通株に転換するまで議決権がない優先株や劣後ローンの形で実施されることが多い。これまで5つの法律に基づき、大手銀行や地方銀行に約12兆円が注入されている。
公的資金を受けると国に経営強化計画を提出しなければならないなど、経営の自由化が低下するという側面がある。金融機関は公的資金を敬遠し、注入されてもできるだけ早く完済しようとする傾向が強い。(2008/12/12日経より転載)
★産業再生機構・・・経営不振に陥った過剰債務企業の立て直しのため、官民が共同で出資して2003年四月に発足。07年三月に解散した。企業と主力銀行の支援要請を受けて、機構内の産業再生委員会が判断した上で支援し、再建後にスポンサーに株式や債権を売却した。
バブル崩壊で積み上がった銀行の不良債権を円滑に処理するため、金融と産業の一体再生を目指す政府の主導でつくった。多額の有利子負債が経営の重荷になっていたダイエーやカネボウ、大京、ミサワホームなど約四十件を支援。解散後に利益剰余金を国庫に納付した。(2009/1/10日経より転載)
★金融機能強化法・・・国が公的資金を予防的に注入できることを定めた法律で、昨年十二月に改正した。総枠十二兆円を用意し、希望する銀行は2012年三月まで申請できる。主に銀行が対象で、国が優先株を買い取る仕組み。金融機関の経営基盤を安定させ融資余力を高めるのが狙いだが、現時点で年度内注入を表明したのは札幌北洋ホールディングスなど三行にとどまる。(2009/2/19日経より転載)
【後日記】『社債購入基準 シングルA格以上で』(2009/2/14より転載)
日銀は企業の資金繰り支援策の一環として買い取りを検討中の社債について、対象とする格付けの基準を「シングルA格相当以上」とする方向で調整に入った。
資金供給の担保として受け入れる社債については、投資適格の下限とされる「トリプルB格」までが対象だが、損失を被るリスクが高い買い取りではより厳格な基準が必要と判断するとみられる。
十八、十九の両日開く次回の金融政策決定会合で詳細を詰める。日銀は一月の決定会合で償還までの残存期間が一年以内の社債を金融機関から買い取る方針を決め、内容を検討することにしていた。
【後日記】『政策金融公庫 CP、最大2兆円発行』(2009/2/18日経より転載)
日本政策金融公庫は三月末までに最大二兆円の政府保証付きコマーシャルペーパー(CP)を発行する。まず二十日に一千億円分の三カ月物CPの入札を実施する予定。日本公庫が調達した資金は日本政策投資銀行に融資し、同行はCP買い取りに充てる。政投銀は大企業の資金繰りを支援するため、CPの買い取りを進めている。
日銀は日本公庫が発行するCPについて、資金供給の際に引き受ける担保の対象に加えることを検討する。早ければ十八、十九日の金融政策決定会合で議論する。政投銀が企業からCPを買い取るための原資を間接的に供給し、買い取りが円滑に進むようにする。
【後日記】『米シティ、政府管理下入り観測 銀行の「国有化」 日本の先例』(2009/2/27日経より抜粋)
国有化は経営危機に陥った銀行の経営権を一時的に国が握ることを意味する。日本では主に債務超過の状態にある銀行に適用する「破綻処理方式」と、債務超過ではない銀行に対する実質的な国有化である「破綻前方式」の二つに大別できる。
破綻処理方式の最初の例は98年の日本長期信用銀行と日本債券信用銀行。バブル崩壊後の不況で不動産や建設向けなどの不良債権が膨らみ、経営危機に陥った二行に、政府は金融国会で成立した金融再生法の「特別公的管理」を適用した。
特別公的管理は債務超過に陥った両行のすべての株式を強制的に政府がゼロ円で買い取り、管理下に置く措置。既存株主が持つ株式は無価値になった。両行ともに破綻前、現在のシティのように公的資金の注入を受けたが経営悪化に歯止めがかからず国有化された。
もう一つの適用例が2003年の足利銀行。当時、銀行の破綻処理法制は預金保険法に一本化され、政府が「国や地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じる恐れがある」と判断すれば国有化できる規定を設けていた。
政府は預保法102条三号に基づき、債務超過に陥った足利銀に「特別危機管理」を適用。株式を強制的に政府がゼロ円で買い取った。
破綻処理方式で国有化した三行では、預金を全額保護した。旧経営陣は辞職し、裁判で責任追及された人もいた。国が選定した経営陣を派遣し、銀行経営を立て直した。長銀や日債銀を巡っては巨額損失を穴埋めするため、六兆円を超える公的資金が使われた。三行は国有化から数年後、経営が軌道に乗った段階で、民間のファンドや金融機関に譲渡された。
一方、実質的な国有化である破綻前方式は03年のりそな銀行。多額の不良債権に苦しんでいた当時のりそな銀を放置すれば、地域経済への悪影響が避けられない。政府は預保法102条一号を適用し二兆円規模の公的資金を資本注入した。普通株や議決権のある優先株を引き受けたことで国の議決権は50%を超え実質的に国有化した。
りそな銀は直近の自己資本比率が国内基準行の規制水準である四%を大幅に下回っていたものの、債務超過ではなかった。これが破綻前方式を適用する決め手になったが、巨大銀行を破綻させる副作用を政府が恐れたためとの見方もある。既存の株主は株式数の増加による希薄化の影響を受けたが、破綻処理方式のように株式が無価値になることは免れた。
政府は国有化当初の段階で強力に経営に関与した。旧経営陣を退任させたうえで新たな経営者を指名した。さらに民間の有識者らでつくる経営監視チームを派遣した。
★シティグループ・・・銀行シティバンクを中核とする世界最大級の金融グループ。1998年に銀行のシティコープと証券・保険のトラベラーズ・グループが合併し誕生した。本社ニューヨーク。百カ国以上で事業展開。約二億の顧客口座を持つ。2007年末以降、証券化商品の損失拡大で業績が悪化。今年一月に包括リストラ策を発表、日本の日興コーディアル証券など非中核事業の売却を計画している。総資産額は二兆ドルを割り込み、米銀首位の座をJPモルガン・チェースに譲った。
★国有化と政府管理・・・政府が民間企業の過半数の株を保有する場合、「国有化」と呼ぶことが多い。バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が二十四日の議会証言で米政府による銀行国有化を否定した際には「これは国有化ではない。銀行の全株式あるいは過半すら保有しないからだ」と説明している。
株式保有が半数に満たない場合でも政府が筆頭株主の地位にあり、配当や人事、経営方針など企業の重要戦略に影響を及ぼす場合には「政府管理」もしくは「公的管理」の状態にあるとされる。いずれも厳密な意味での定義はない。
【参考】『銀行への公的資金注入 回収利益1.3兆円』
だそうです(日経6/5より)。金融庁が98年から03年まで、金融システムを維持するため早期健全化法、金融機能安定化法、預金保険法に基づき、34行(現在、再編により22行)へ資本注入した計12.3兆円の公的資金のうち、現在までに額面ベースで8.8兆円が回収されたそうです。
【参考】『懲悪論生む 備えなき危機』
7/19の日経に政経部次長の感想があったので以下に転載。
大野木克信元長銀頭取らについては、当時から「刑事責任まで問うのは酷だ」との声があった。経営危機を招いた責任は免れないが、不良債権をつくった責任なら以前の経営陣にもあった。
それだけではない。バブル生成と崩壊を招いたマクロ経済運営。危機に備えた安全網の構築を怠った行政と政治。あいまいで、かつ見えにくいが故にこれらの責任は顧みられることが少なかった。破綻以降の十年は、責任の明確化のあり方が問われた期間でもあった。
金融危機の際に市場機能を維持するには、中央銀行の流動性の供給と政府の損失肩代わりが必要なのはほぼ自明である。信用創造がマヒすればお金の流れが止まり、経済全体が大打撃を受ける。だが、危機に直面した多くの国の歴史はこの論理を貫く困難さも教えている。なぜ銀行は特別扱いなのか、なぜ経営の失敗のツケを国民が払うのか・・・。
十年前には長銀も「市場」と「民主主義」の間でもみくちゃだった。自民党は1998年七月の参院選で大敗し、橋本首相(当時)が退陣。その後の小渕政権でも長銀危機が最大のテーマになった。
結局、政治は長銀を破綻処理するのと引き換えに、銀行への公的資金注入を可能にする金融再生関連法を成立させる。危機への備えがつくられる過程で、大野木氏らに刑事責任を負わせる勧善懲悪の論理が幅をきかせる素地が出来上がった。
だが、その後、破綻の恐怖に追い立てられた銀行経営者は同法を活用し、金融再編になだれ込む。今の銀行経営は長銀破綻と引き換えに成立した関連法があって初めて可能になった面がある。
危機への備えを事前に万全にするのは実に難しい。貯蓄金融機関(S&L)危機、ヘッジファンド危機を経験し、もがき苦しんだ米当局は今またサブプライム問題で揺れ動く。公的資金への地ならしなのか、操作当局は経営責任追及の動きを見せ始めた。歴史は繰り返すのだろうか。
【後日記】『信用緩和と量的緩和』(「大機小機」2009/3/11日経から転載)
「百年に一度」の金融危機の下にあって日米英の中央銀行は、コマーシャルペーパー(CP)や社債、資産担保証券(ABS)など企業金融にかかわるリスク資産の購入という「信用緩和策」で足並みをそろえ、信用収縮に対抗しようとしている。だがリスクの取り方には大きな違いがある。
例えば米連邦準備理事会(FRB)の場合、一兆ドルを購入予定のABSについては、流動性の供給はFRBが行うが、損失は財務省が負担する。その他のリスク資産でもFRBが損失を被ることのないよう周到な配慮が払われている。英国でも損失はすべて政府の負担である。
これに対し日銀はCPや社債に加え、株式まで購入するとしているが、損失の負担も含めすべて日銀単独の責任であり、政府との協調体制はとられていない。
中央銀行がリスク資産の購入によって損失を被れば、国庫納付金の減少などにより最終的には負担は納税者に帰着する。これは議会のコントロールなしに行われる、いわば裏口からの財政政策にほかならない。その意味でリスク資産の購入自体は市場に精通した中央銀行が行うが、損失は政府が負担するという米英の枠組みは、政府と中央銀行の役割分担として適切だ。日本でも同様の仕組みがとられれば、日銀単独の場合を大幅に上回る規模のリスク資産の買い取りが可能になるだろう。
一方で日銀は2006年まで行われた「量的緩和」の復活には消極的である。その理由は、「量的緩和の下での日銀当座預金の増加は、金融システム安定の効果はあったが、明確な景気刺激効果は認め難い」ということのようだ。しかしこの理由付けは、二つの点で量的緩和策の効果を過小評価するものである。
第一に、いわゆる「量的緩和策」は単に日銀当座預金量の拡大だけでなく、長期国債買い入れの増額や時間軸の設定など、いくつかの部品を総合したパッケージの金融緩和策として実施された。政策の効果もパッケージ全体として評価されなければならない。
第二に、金融システムに対する効果と景気刺激効果は厳密には分けられない。金融と実体経済は密接に絡み合い、金融システム安定の効果があれば経済全体にも当然良い影響を及ぼしたはずである。金利引下げ余地が事実上消滅した現在、既に有効性が確かめられた「量的緩和」をなぜためらうのか。
【参考】『日銀 国庫納付金18%減』
日経5/30によれば、日銀の07年度決算で、国庫納付金が前年度比で18%減の6087億円となったそうです。
経常収入は保有国債の利回り上昇などで23%増の1兆4007億円となり、以前に金融機関から買い取った株式の売却益なども3130億円に達したそうですが、99年度以来の大きな外為評価損が生じたために経常利益を圧迫したとのことです。円高の進行で外貨建て資産の評価損が6037億円に膨らんだそうです。
07年度末の総資産は113兆4000億円で、前年度比0.6%増です。自己資本比率は0.06ポイント低下して、7.47%です。
★国庫納付金・・・日銀や日本中央競馬会(JRA)など、政府関係機関や特殊法人が利益を上げた際に、一部を国に納付するお金。国の一般会計における歳入となり、税外収入の大きな割合を占める。2009年度予算では1兆円を超える納付金が歳入に計上された。最終的には歳出を通じて国民に還元されることになる。
日銀はお札を発行する代わりに国債などの資産を保有し、利子収入などが利益になる。日銀は法人税などを除いた当期剰余金のうち、積み立てが義務付けられている法定準備金や配当金を除いた残りが国庫納付金となる。07年度決算では6087億円を国庫に納めた。海外の主要中央銀行でも同様の制度がある。(2009/4/12日経より転載)
主な国庫納付金(2009年度予算)
日銀・・・6694億円
日本中央競馬会・・・2578億円
造幣局・・・174億円
特定アルコール譲渡者・・・126億円
日本スポーツ振興センター・・・50億円
【後日記】『バブル後の日本は・・・ 不良資産買い取り 試行錯誤重ねる』(2009/3/24日経より転載)
日本でもバブル崩壊後の不良債権処理では、不良資産の買い取りの仕組みづくりの試行錯誤が続いた。今回の米国の対策は公的資金を使って金融機関から不良資産を切り離すという点では、日本の整理回収機構(RCC)や産業再生機構に近い案といえる。問題は金融機関が実際にどの程度利用するかだ。
日本の不良債権買い取りの最初の試みは、1993年に百六十二の金融機関の共同出資で発足した不動産担保付債券を買い取る株式会社「共同債権買取機構」だ。同機構には公的資金が投入されず、銀行は不良債権の買い取り資金を機構に融資しなければならなかった。このため、本当の意味で銀行から不良債権を切り離す最終処理には力不足だった。
金融不安が深刻になった99年にはRCCが発足した。これは破綻金融機関から公的資金を使って不良債権を買い取る組織で、米国で90年代の不良債権処理に使われた整理信託公社(RTC)がモデルだった。RCCは不良債権の買い取りだけでなく破綻した金融機関や悪質な債務者などの責任追及を厳しく進めた。
03年には金融と産業の一体再生を進める狙いで産業再生機構を設立。政府や民間の資金を使って、過剰債務に苦しむ企業への債権を買い取り、民間出身の専門家のもとで企業再生にも取り組んだ。
今回の米国の対策はRCCや産業再生機構と同様に、金融機関から不良資産を切り離すことにはなりそうだ。ただ、問題は米金融機関が大きな損失を出してまで不良資産を売却するかどうかだ。
日本でも金融機関が大きな損失を出して不良債権処理に取り組むには、当局の強力な検査・監督や公的資金による資本注入が必要になった。米国の今回の対策も金融機関が実際にどの程度活用するか、さらに不良資産を売却して巨額の損失が生じた場合に不足する自己資本をどう手当てするかなどが課題になりそうだ。
【後日記】『資金繰り支援 企業全体に安全網』(2009/4/8日経より転載)
総額三十七兆円規模に上る企業の資金繰り支援策を追加経済対策に盛り込むことで、政府は大企業から中堅・中小企業まで企業全体の安全網を整備することになる。七日には企業への公的資金注入を盛り込んだ産業活力再生特別措置法(産業再生法)改正案も衆院を通過。政府による産業支援が加速する。
金融危機対応の資金繰り支援策は政府が昨年十二月に導入した。日本政策投資銀行や商工組合中央金庫の「危機対応業務」は日本政策金融公庫を通じて公的資金を政投銀などに供給し、企業に低利融資する仕組み。追加対策では商工中金の中堅企業向けの融資枠を約八千億円とし、政投銀の融資枠も拡大する。
産業再生法改正案が成立すると、政投銀による大企業への出資が可能になるほか、中堅企業向けの支援制度が新設される。中堅企業向けの支援制度は、産業再生法の認定を受けた企業への民間銀の融資に中小企業基盤整備機構が保証を付ける。損失の補償割合は50-70%で、融資一件あたりの保証限度額は二十億円になる。追加対策では中小機構の保証枠も二兆円に設定し、当初想定していた数千億円の枠から拡大する。
政府は世界的な金融危機が表面化した昨秋以降、資金繰り支援策を相次いで打ち出している。大企業向けには政府・日銀によるコマーシャルペーパー(CP)や社債買い取り。中小・小規模企業向けには民間金融機関の融資を全国の信用保証協会が100%補償する「緊急保証制度」を段階的に拡充。追加対策でも保証枠を拡大する。
大企業と中小企業のどちらにも当てはまらず、財務基盤や信用力が強固でない中堅企業は「エアポケットになっている」(全国銀行協会)との指摘もあったが、追加対策では資金繰り支援を手厚くする。企業の三月期決算発表が集中する四月下旬から五月にかけて、資金繰り不安が再燃する恐れがあり、政府は支援に万全を期す。
【後日記】『商工中金、1500億円増資 完全民営化、3年半先送り』(2009/4/24日経より転載)
政府・与党は二十三日、商工組合中央金庫に対し千五百億円を増資する方針を固めた。政府がまとめた追加経済対策で貸付枠が三兆円超に拡大するため、財務基盤の強化が必要と判断した。2013年から15年としていた完全民営化の時期も三年半先送りする。
商工中金は中堅・中小企業の資金繰りを支援する「危機対応業務」を昨年十二月に導入した。三月末までに三千八百億円の利用があり、景気後退の深刻化で今後も利用が伸びると見込まれている。
政府は追加経済対策で貸付枠を九千億円から三兆三千億円に拡大することを決定。商工中金の貸し付け拡大に伴い自己資本比率が低下しており、貸し付けが抑制される恐れが指摘されていた。商工中金の設置法を改正し、新たに千五百億円の「危機対応準備金」を創設する。
中小企業などへの融資が大幅に増加するため、政府は「リスクを取る一方で完全民営化を進めていくことは矛盾する」(望月晴文経済産業次官)と判断。政府保有株の売却時期を17年四月から19年四月までの間に先送りする。
【後日記】『量的緩和って何?』(2009/5/8日経より転載)
欧州中央銀行(ECB)が金融機関への資金供給策の拡大を決めた。政策金利以外の手段で金融を緩和する枠組みで、日本銀行や米連邦準備理事会(FRB)と並ぶ広義の「量的緩和」といえる。
Q 通常の金融緩和とどう違うのか。
A 通常なら中央銀行は政策金利の変更(利上げや利下げ)によって金融調節する。だが政策金利の水準がゼロ近辺になったり、景気が大幅に悪化したりする場合には金利変更のみでは金融緩和の効果を浸透させられない。伝統的な政策金利の変更に対して「非伝統的な手段」とも呼ばれる。
Q 量的緩和とはどういうことか。
A 日銀は当座預金残高を金融政策の目標とした2001年から06年の政策を量的緩和と呼んでいる。現在は量的緩和とは呼んでいないが、利下げが限界にきているなか長期国債や社債の購入で資金供給を拡大している。FRBは金融危機を受けて当初、証券化商品の購入など焦点を絞って資金供給したが、長期国債の購入にも踏み切り市場全体に資金を供給する姿勢を鮮明にした。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは中央銀行が資産購入により資金を供給し「中銀のバランスシート(貸借対照表)が膨らむような政策は量的緩和といえる」と話す。ECBのトリシェ総裁は厳密には「量的緩和ではない」としているものの、日米欧とも利下げ以外の手段で金融市場に供給する資金量を増やす広義の「量的緩和」と位置付けられる。
Q 量的緩和の効果は。
A 潤沢に資金供給するほか、金融市場のリスクを軽減する効果がある。FRBは取引が敬遠されている証券化商品を購入し、市場のリスクを引き受けた。利下げは翌日物など短期の金利引き下げには効果があるが、ECBは資金供給期間を一年に延長することで、中長期的な金利低下効果を狙ったといえる。
【後日記】『政策金融を活用した主な危機対応策』(2009/5/22日経より転載)
★政投銀・商工中金を通じた大企業・中堅企業向け低利融資(計2兆円の融資枠→10兆円へ拡大*)
★政投銀を通じた企業からのCP購入
★日銀によるCP・社債の買い取り
★国際協力銀による先進国事業向け融資(米欧などに進出する日本企業の出先や国内親会社に融資)
★政投銀による産業再生法認定企業への出資(出資が焦げ付いた場合、国が損失の5-8割を補てん)
★4兆円枠の官民折半の緊急融資制度(検討中*)
注.*は実行に必要な予算案・法案が未成立
【後日記】『企業支援オペ 日銀、1.1兆円供給』(2009/7/11日経より抜粋)
日銀は10日、社債などを担保に金融機関へ資金を供給する「企業金融支援特別オペ(公開市場操作)」を実施した。応札額は1兆1301億円となり、前回(3日)に続き1兆円を超えた。返済日は10月5日で、今年度第2四半期の9月末を越える期間での初の供給となる。根強い資金需要を裏付けた形で、同オペの延長に関する議論に影響を与えそうだ。
特別オペは社債やコマーシャルペーパー(CP)を担保に金融機関に対して年利0.1%で貸し出す仕組み。約1兆3千億円を供給した4月16日のオペの返済日が今月15日に設定されており、この時に応札した金融機関の大半が今回、借り換えに動いたとみられる。
日銀はCPを買い取るオペも10日実施した。3000億円の予定額に対し応札額は270億円で、応札額が予定額を下回る「札割れ」が続いた。6日に実施した社債の買い取りも札割れだったが、いずれも日銀は「安全網」と位置付けており、利用が少なくても問題はないとの立場を取っている。
【後日記】『政投銀 エルピーダと投資契約』(2009/8/7日経より転載)
改正産業活力再生法(産業再生法)の施行を受けて、日本政策投資銀行は7日にもエルピーダメモリと投資契約を結ぶ方針を固めた。出資額は約300億円で、政府がその8割を実質的に負担する。政府が打ち出してきた金融危機対策の目玉の一つである、公的資金を一般企業に注入する枠組みが動き出す。
エルピーダは産業再生法に基づく公的資金注入の第1号案件。政府は6月末に産業再生法の適用を認定し、支援に乗り出した。政投銀が優先株を引き受ける形で約300億円を出資する。
政投銀は投資契約の際に、「エルピーダが産業再生法に基づいて作成した事業計画を着実に実行する」など複数の条件をつける見通し。出資が安易な企業救済にならないよう、条件を厳しくチェックする。
エルピーダは日本で唯一、パソコンなどの基幹部品であるDRAM事業を手掛ける半導体メーカー。グループで6000人弱の従業員を抱え、雇用への影響も大きい。経営が不安定になれば半導体供給に悪影響を及ぼしかねず、政府は電機メーカーなど産業界の国際競争力を維持する観点からも経営基盤の強化が必要と判断している。
【後日記】『公的な企業支援策』(2009/8/8日経より転載)
政府や政府系金融機関による出資や融資といった企業支援策。金融危機が深刻になった昨年秋以降、政府は日本政策投資銀行などを通じて企業に公的資金を注入したり、運転資金を貸したりする制度を拡充した。健全な企業の破綻を予防し、景気の底割れを防ぐ狙いだ。
政投銀は主に大企業の資金繰りや経営を支援。企業再生支援機構は中小・中堅企業を対象とし、出融資のほか債権放棄など取引行の利害を調整する点が特徴。先端技術を持つ企業に出資する官民ファンド「産業革新機構」も7月末に発足した。
<主な公的企業支援>
企業再生支援機構:地方の中小・中堅企業などが対象:取引行に債権放棄などを促し、過剰債務を圧縮
日本政策投資銀行(緊急対応業務):主に大企業を支援:低利融資や資本注入
産業革新機構:官民で先端技術開発に投資:技術力のあるベンチャー企業の支援も想定
【後日記】『銀行保有株 買い取り額 伸び鈍化』(2009/8/9日経より抜粋)
政府と日銀による銀行保有株買い取り額の累計が7月末時点で1760億円に達したことが分かった。6月末に比べて14.7%(計226億円)増えた。買い取り実績を徐々に増やしているが、伸びは鈍化。景気回復への楽観論と悲観論が交錯するなか、7月の日経平均株価は1万円を一つの節目に上下する展開だったため、見極め姿勢を強めた金融機関が多かったようだ。
政府と日銀は昨秋の金融危機を受け、株式の買い取り制度をそれぞれ今年から再開した。政府の「銀行等保有株式取得機構」による7月の買い取り額は102億円。日銀の営業毎旬報告によると、日銀の買い取り額は124億円だった。
金融機関が保有する株が値下がりすると、自己資本比率が低下する。経営体力が落ち、融資しにくくなる恐れがある。現行制度は時価で買い取るため、株価水準が低いときに政府・日銀に持ち込めば売却損が発生する。
【後日記】『九州の中小再生 ファンドで支援 中小機構など30億円で』(2009/8/9日経より抜粋)
中小企業基盤整備機構と、大分銀行や福岡銀行など九州の金融機関は10日、総額30億円の中小企業再生ファンドを設立する。九州各県の再生支援協議会が手掛けた再生計画にもとづいて、出資や債権買い取りなどの再生支援を行う。九州全域の企業を支援対象とするファンドの設立は初めて。
ファンドには中小機構が全体の半分にあたる15億円を出資するため、民間ファンドに比べ長期にわたり支援を続けられる。
中小機構出資のファンド設立は19件目。これまでは各県に設立したファンドに、その県内の金融機関しか加わらなかったため、支援対象も県内企業に限られていた。
【後日記】『政府の主な中小企業向け資金繰り支援策』(2009/8/14日経より転載)
<経由する金融機関:支援策/内容/実施額>
信用保証協会:緊急保証/民間金融機関の融資を100%保証/12兆8457億円
日本政策金融公庫:セーフティネット貸付/中小・小規模企業向け融資/3兆4179億円
日本政策金融公庫:マル経融資/小規模企業を対象に無担保無保証で融資/664億円
商工中金:危機対応融資/中小企業向けの融資/7568億円
注.セーフティネット貸付と危機対応融資は2008年10月~09年7月、緊急保証制度は08年10月31日~09年7月31日、マル経融資は09年4月~7月
【後日記】『REIT支援の官民ファンド 40社が300億円出資』(2009/8/26日経より抜粋)
不動産投資信託(REIT)の資金繰りを支援するため9月中に官民が設立する「不動産市場安定化ファンド」に対し、民間企業約40社が300億円規模で出資することが25日、分かった。出資企業には三井不動産など大手不動産会社のほか金融機関などが含まれており、不動産市場の正常化に向けREIT関連企業の多くが参加する。
安定化ファンドは4500億円規模を想定。このうち借入金で約3600億円、日本政策投資銀行からの劣後ローンで約600億円を賄い、残り300億円は野村証券が企業からの出資を募っていた。
【後日記】『金融庁 信組に公的資金』(2009/9/12日経より転載)
金融庁は11日、全国3位の信用組合である山梨県民信用組合に、新しい金融機能強化法に基づき450億円の公的資金を資本注入することを正式に決めた。信組に同法を適用するのは初。地域経済の停滞を背景に不良債権が増加しているため、国の資本支援によって地域の信用収縮を防ぐ。みちのく銀行、きらやか銀行、第三銀行への公的資金注入も同時に決定。合計で1150億円に上る公的資金を9月末に資本注入する。
新しい強化法に基づく公的資金の資本注入は、今年3月末に実施した札幌北洋ホールディングスなどに続く第2弾。昨秋の金融危機後の株価急落や実体経済の低迷によって動揺した地域の金融システムの安定化を図る。
山梨県民信組は過去に信組の中央機関である全国信用協同組合連合会の資本支援を2度受けていた。金融庁は全信組連を通じた信託方式で、当面必要な資本額を上回る450億円を注入。抜本的な不良債権処理と累損の一掃を促す。
第三銀に300億円、みちのく銀ときらやか銀には各200億円を注入し、不良債権などの処理を加速させる。みちのく銀の杉本康雄頭取は同日の記者会見で「株価の大幅な下落などがあっても、地元企業を十分サポートできる態勢が整う」と語った。
9月末までに国が優先株などの引き受けを通じて公的資金を注入する。
【後日記】『産業再生法 認定500件 施行10年で』(2009/9/15日経より転載)
企業の財務体質強化や事業再生を支援する産業活力再生特別措置法(産業再生法)の認定件数が1999年の施行以来10年で500件に達した。持ち株会社による大手銀行や百貨店の経営統合を後押ししたほか、8月末には半導体大手エルピーダメモリへの公的資金注入にも結び付いた。世界的な金融・経済危機を脱却する過程で、利用のペースは増えそうだ。
産業再生法はバブル経済崩壊後の日本経済を立て直す目的で、99年10月に施行された。企業が不採算部門からの撤退といった事業の再構築計画を所管官庁に提出し、認定を受ければ株式発行に伴う登録免許税の優遇措置や分社化手続きなどで恩恵が受けられる。
みずほフィナンシャルグループなどのメガバンクや、大丸・松坂屋、伊勢丹・三越などの巨大百貨店の持ち株会社の設立に適用され、大型再編を側面から支えた。昨秋以降の金融・経済危機で資本不足に陥った企業を支援するため、今年4月には事業会社に公的資金を注入できる機能も追加し、エルピーダが第1号案件となった。
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